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 相羽です。

 上北ふたご先生が描く漫画版『ヒーリングっど♥プリキュア』コミックス第1巻の感想です。

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 ネタバレ注意です。
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 第1話の、ツタをやさしく丁寧にほぐして看板として「再生」する……というくだりに作品全体のエッセンスがつまっていると感じました。

 お店に関してはツタが邪魔なのでもう畳むしかないとか、逆に生き残るためにツタを切るしかない……みたいな、どちらかが生き残るゼロサームゲームだ! 的な殺伐とした解答があり得る中で、

 ツタを切らないまま丁寧にほぐして移動させて看板として再生させる……という、「お店」と「ツタ」の両方を「再生」させるという知恵が描かれています。

 「お店」は「人間がつくったもの」の象徴で。

 「ツタ」は「地球の自然」の象徴と思われますので。

 TVシリーズ本編でも、何らかのかたちでこの二つの再生、調和が描かれていくのかな、と感じるのでした。

 「ツタ」の拡大志向は、とにかく地球を蝕む(自己を拡大させる)ビョーゲンンズの拡大志向、自分で地球を覆ってしまいたいビョーゲンズたちと比喩的に重なっている気もするので。

 「ツタをやさしく丁寧にほぐして看板として『再生』する」という漫画版第1話のオチは、プリキュアたちとビョーゲンズも、何かしら「調和、再生、両立」的な落としどころになっていくのを暗示してたりするのではないかと思ったのでした。

 ビョーゲンズたちもとくに直接的に地球に害はなさず、一方でビョーゲンズ側の拡大志向も上手く逃がす(「ツタ」をほぐして移動させる的な……)ことができる……みたいな「何か」が物語の終盤では解答の一つとして描かれたりするのでしょうか。

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 僕としては今回の単行本を通してキャラクターの理解が深まりましたので、以下、ちょっと三人の登場人物について書かせて頂きます。


●花寺のどか

 第3話で、ただ、あるがままの地球の自然で満ち足りることができる……というのをのどかが感得し直す、しみじみと感じる……シーンが描かれます。


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(『ヒーリングっど♥プリキュア』1巻 東堂いづみ・上北ふたご/講談社 より引用)


 メインキャラクターたちは三人とも「癒し」関係の属性を持ってはいるのですが(今年は名前も、のどか、ちゆ(治癒?)、ひなた……と、どことなくのんびり系というか癒し系の名前です。)。

 特にのどかは、「再生」、「自然」、といった方面の「癒し」と関連が深いキャラクターなのだなと改めて思ったのでした。


●平光ひなた

 のどかは「自然」での「癒し」を感得しましたが、逆に「自然」である梅雨の長雨でひなたが落ち込む……というエピソードが第4話では綴られます。

 そんなひなたの問題の解決が描かれるのが。


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(『ヒーリングっど♥プリキュア』1巻 東堂いづみ・上北ふたご/講談社 より引用)


 …と、ファッションで解決です。

 TVシリーズ本編の感想で、ずっとひなたは「消費文明」の象徴的なキャラクターなのではないかという話を書いておりましたが。

 「消費文明」というのは、上記の第1話だと、「お店」側、「人間がつくったもの」側ですね。

 のどかが、「自然」側、「地球の自然」側の象徴ですので、のどかとひなたの二人で、ちょうど「癒し」には「人間がつくったもの」「地球の自然」の両方大事、というかバランスだよね、「調和」だよね、というのが描かれていると思うのですね。

 「自然」は確かに「癒し」感としてイメージしやすいですが、あんまりそっちの方に振り切ってしまうと、「地球の自然のためには人間はいらないんだ!」みたいな方向にもいきかねないので(笑)、ここで平光ひなたというキャラクターを、「人間がつくったもの」側の「良さ」を象徴する存在として描いているのは、とてもイイな、バランスが取れているな、と思うのでした。

 「自然」は大事ですが、文明の灯火(ともしび)も灯っていてほしいと思います。


●沢泉ちゆ

 のどかさんは、「自然」。

 ひなたさんは、「人間がつくったもの(消費文明)」、それぞれの「癒し」の側面と縁が深いと分かりやすいのですが。

 そうなると、今のところ僕の理解が追いついていないのが、ちゆさんです。

 彼女は、生きている動機がちょっと哲学的です。アニメ第8話「とべないちゆ!?陸上大会大ピンチ!」では、こういった言葉を語っております。


「空を泳いでみたいって思った」

「海と空が溶け合った、あの青い世界に近づくために」

「また一歩あの場所に近づける」



 海と空、そして「温泉」という属性を彼女は持っていますから、心持ち「自然」よりなのかな、とも思いますが、上昇志向は強めの子で、「上昇志向(上を目指したい)」という欲求は、どちらかというと「人間がつくったもの(消費文明)」よりの衝動です(良いものをつくって、より上の暮らしを目指そう的な方向だから)。

 そんな沢泉ちゆさんがが今回のコミックスで見せるのが、リンボーダンスです。


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(『ヒーリングっど♥プリキュア』1巻 東堂いづみ・上北ふたご/講談社 より引用)


 わ、わからん……。  と、途方に暮れかけましたが、ちょっとだけ沢泉ちゆさんの理解が深まったこと。

 あ、ああ。(位置的に)「上」を目指すハイジャンプに対して、(位置的に)「下」を意識するリンボーダンスで気づきを得る……というエピソードなので、

 「上昇志向(上を目指したい)」と「下方志向?(下にも意味がある)」を「調和」させていく、「両義(同時に成立させる)」にしていく……みたいなテーマもあったりするキャラクターなのかなと。


 海と空が溶け合った、あの青い世界


 「空」が「上」な反面、「海」は「下」なので、


 「海と空が溶け合った、あの青い世界に近づくために」(沢泉ちゆ)


 のセリフは、「上昇志向(上を目指したい)」と「下方志向?(下にも意味がある)」を「調和」させる的な意味合いを含む場所を目指している……という仮説は、ある程度あり得そうです。

 つまり、「空」を目指す的な上昇志向と消費文明的、「人間がつくったもの」の象徴である平光ひなたさんと、「海」的な下方志向(というか、我々の下に当たり前のようにある、大地、海、地球とかを大事に志向)的な「地球の自然」の象徴である花寺のどかさんとを、とり繋ぎ、調和させ得る存在、それが沢泉ちゆさん。

 今の物語の進行度の時点では、ちゆさん自身も自分が何を目指してるのか明確にはまだ理解してなくて、彼女自身が自分が目指してるもののカタチを知りたい…みたいな段階なのかなと思いますが。

 まだ、よくは分からない。

 よくは分からないけど、ちゆさんは、カッコいいしカワイイ。

 ◇

 もともとシリーズタイトルが『プリキュア』で、『プリキュア』の「キュア」は"Cure"で「癒し」でしょうから、土台に「癒し」の精神はあったシリーズだと思うのですが。

 『ヒーリング』っど、ということで、今作はより「癒し」の要素が顕著です。

 エピソードや今作での絵で、上北ふたご先生も「癒し」をキーワードとして改めて意識している印象を受けたりもします。

 もはや、ついつい、当たり前のように毎年プリキュアシリーズの漫画版を手がけておられるように思ってしまいがちですが、定期的に思い出したい事項として、相変わらずの本当に素晴らしい画業です。

 僕本体なども、16年前から、上北ふたご先生の漫画にも癒されながら生きている部分は大きいのだろうと思ったりしたのでした。

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