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『トロピカル〜ジュ!プリキュア(公式サイト@東映/公式サイト@朝日放送)』第21話「夏休み!トロピカる部の合宿計画!」の感想です。
ネタバレ注意です。
「海」からみると「陸」は異界、逆に「陸」からみると「海」は異界。
『トロピカル〜ジュ!プリキュア』はそんな二つが交わる「境界領域」の物語であり、「プリキュア」は「境界領域」の象徴だ……といった趣旨の文章をこれまでの感想で書いてきましたが。
いよいよまなつさんとローラをはじめ、「トロピカる部」の面々、「南乃島」という異界へ。否、おそらくは更なる「境界領域」的な場所へ……という盛り上がる展開です。
「南乃島にしか咲かない花」は、さんごさん絡みのエピソードへの仕込みでしょうか。「紫色のチューリップ」以上に「特殊性」的な花です。
涼村さんごさんのルーツ的なエピソードである第3話の、幼少期、他のみんなは赤いチューリップを植えたけど、さんごさん一人だけ「紫色のチューリップ」を植えた(そしてそのことに長い間なんだか後ろめたさを感じていた)……というエピソードは、近年のプリキュアシリーズ的には「多様性」ネタなのですよね。
そんなさんごさんが、ついに本物の珊瑚(サンゴ)に言及。
さんごさんの名前からしてそういう意図があるネーミングであると推察されますが、珊瑚礁は、(生態系の)「多様性」やレジリエンス(回復力)の話題でよく言及されるメジャーな題材なので、いよいよきたか! という感じです。
以下、『漢方がみちびく心と体のレジリエンス(回復力)』(大阪大学出版会)より引用。
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生態系の多様性のなかでレジリエンスが機能する例としてあげられるのがサンゴ礁です。サンゴ礁には、魚だけでなく、海藻、貝、カニやエビ、プランクトンなどさまざまな海の生物が関わり、気温、水温、酸素濃度、日光の照射時間、波の流れの速さなどの海洋環境のバランスの上に成り立っています。
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この本は素晴らしい本なのでかなりおすすめです。↓
「多様性」について少し整理すると、いったん、
・個人の中の「多様性」
と
・社会(チーム、国家など)の中の「多様性」
とに分けて考えた方が頭が整理できそうです。
最近の感想でずっと書いてきた、ローラに関して、
●人魚のローラ
●人間の(というか足が生えた)ローラ
●プリキュアのローラ
の3つの側面のローラを、(それぞれを分断されたバラバラとしてではなく)全部でローラだよね、ALL(オール)ローラだよね、と「全体性」を回復していく……
参考:『トロピカル〜ジュ!プリキュア』第17話の感想〜ありのままの自分でいられる「居場所」をくれた愛する人を守るという2021年の『人魚姫』(ネタバレ注意)
参考:ラジオのこの回(再生すると音が出ます)↓
という話は、個人の中の「多様性」の話です。
ローラという一人の存在の中にも、様々な「側面」が同時にあり、「分断」されずにそれらが「全体性」的に「調和」している……これは「多様性」の話です。
で、最近の感想で書いている通り、ローラで先行して描かれたあとは、ここ数話の『トロピカル〜ジュ!プリキュア』はローラ以外の他のメンバー、さんごさん、みのりさん、あすかさんにも一個体の中に異なる「側面」があるよね(前回のみのり先輩の「ピカリン探偵」など)……という話になってきています(まなつさんは主人公特性で、ちょっとこの流れのストーリーでどういうポジションなのかまだ不明)。
となると、「南乃島」に出かける時の描写は、さんごさん、みのりさん、あすかさん、は、この時点ではまだこれまでの自分(の一つの「側面」)を「異界(南乃島)」にまで持ち込もうとしている描写と解釈できます。
さんごさんはコスメ、みのりさんは本、あすかさんは料理やマクラ、を「南乃島」という「異界」まで持ち込もうとしている。
これは、言い方を強めると、これまでの自分の一「側面」にだけ固執しているという描写です。
ローラが出会いを通して視野が広がってゆき、人魚→+人間→+プリキュア……と新しい「側面」を獲得していって、「多様性存在」へと変化していった流れを踏まえると、この「固執」はブレーキ的な方向なので、おそらく次回以降のストーリーで、「固執」はちょっと手放され、さんごさん、みのりさん、あすかさんは、新しい自分の「側面」と出会う……という風に物語が展開していくと予想されます。
「南乃島」での「通りすがりの『誤配(普段通りにしていたら出会わないような、郵便が間違って配達されるような思いがけない知恵、哲学用語にこういうものがあります)』」が、さんごさん、みのりさん、あすかさんに新たな視野をもたらす!
こうして、まずは一人一人が、自分という一人の人間の中に様々な「側面」を持ちながら「全体性」としては調和している、「多様性存在」的な存在へとバージョンアップしていく。
(ここで押さえておきたいのは、視野が広がって自分の新しい「側面」が見えてきても、これまでの自分をゼロサムゲーム的に否定する必要はないということです。ローラが足が生えても人魚にもなれるように。「南乃島」のイベントでさんごさんの視野が広がっても、引き続きコスメは好きなままでいてよい。ただ、その場合、視野が広がった分、コスメはさんごさんにとってコスメVer.2へとバージョンアップしているものと思われます。このサイクルを回すことで、個人も社会も波打つように少しずつよくなっていく……という新たなプリキュア理論誕生を目の当たりにしている勢いです。)
続いて社会(チーム、国家など)の中の「多様性」ですが、これは、そんな「全体性」的な「多様性存在」が、さらに集まって集団として関係し合っている……というレベルの話です。
これが、小さいチームレベルでは「トロピカる部」であり、国家レベルではもしかしたら「ローラが新女王になったらつくる国」であり、生態系レベルでは「南乃島」なのだと思われます。
このレベルの、「多層多様性共同体」みたいなもので何を描こうとしているのかまではまだ分かりませんが、直感的にこれは素晴らしいだろうなというのは分かります。
前述のリアル珊瑚礁の話では、何らかの生態系が減衰して珊瑚礁が絶滅に向かいかけても他の生態系(何しろ、多様、多層に存在しているから)でカバーして回復力(レジリエンス)も働きますし。
以前、
参考:「トロピカる」というAct(行動)の質の向上〜『トロピカル〜ジュ!プリキュア』第1クールのエッセンス
という記事を書いたりしましたが、もろに、どんな問題が次々と降り注いできても、まず5人の中で誰が一番対応に向いているのかを柔軟に出せますし、さらに対応担当の1人の中にも複数の「側面」がありますから、どの「側面」をどのタイミングでどのくらいの比率で出すのがベスト&ベターか、機動的、瞬発的、ワクワク的に対応していけます。
その上で、5人の中でパートナーを組み合わせた対応をしたり、パートナー同士のどの「側面」とどの「側面」をどのくらいの比率・タイミング・速度で組み合わせていくのかとかが思い描け、それが集団・国家・生態系レベルで関係し合って編み出しているわけですから、もう無限の対応力くらいの勢いです。
こういった部分と全体が調和しながら関係し合っている……みたいな宇宙観は、我々日本人に馴染みがあるのだと宗教的なものとしては象徴として曼荼羅(マンダラ)がありますが、僕はたびたびプリキュアシリーズは曼荼羅的な表現があると思っており(たとえば『映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』のエンディング映像は曼荼羅的な映像表現だと思っています)、
参考:映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズの感想〜子供の頃に思い描いた理想の自分にはなれなかったとしても(ネタバレ注意)
上記の珊瑚礁の生態系的な話と曼荼羅的な宇宙観を結びつけて考える思考法はわりと歴史もあり、(こちらの本とか↓)
そして、曼荼羅(的な宇宙観)について研究していた人としては南方熊楠(みなかた・くまぐす)がいて、僕はプリキュアシリーズと南方熊楠(が研究していたブディズム方面の話)を関係させて考えてみるのが大好きで(笑)、↓
参考:草木国土悉皆成仏を唱えてモフルン師匠にブッダが宿る〜魔法つかいプリキュア!第36話「みらいとモフルン、ときどきチクルン!って誰!?」の感想(ネタバレ注意)
そしてそして、Rubyさん(ブログ/Twitter)の人魚研究進捗(え)によると、南方熊楠も人魚について考えていたようです。↓
参考: 感想:人魚の動物民俗誌(吉岡郁夫)/穴にハマったアリスたち
「トロピカる部」=「南乃島」=「珊瑚礁(に象徴されるような)レジリエンス(回復)生態系」=「曼荼羅(マンダラ)的宇宙観」
そして縦糸のようにちらちら存在感を示す「人魚」という概念。
いよいよ全てが繋がってきたので今年は万象を癒すような文章を書きたいですね(笑)
『トロピカル〜ジュ!プリキュア』最終回の頃、「トロピカる」という概念で全てが繋がって、彷徨えるプリキュアの民たち(視聴者、子供も、大人も、お年寄りも)も、みんな元気になったら熱いな〜と思いながら、一話一話大事に観ていきたいと思っているのでした。
・Himaraya (ヒマラヤ)さんでラジオをはじめてみたので、聴いてやって頂けたら喜びます。『トロピカル〜ジュ!プリキュア』の話もしております〜。↓
●相羽裕司の「ゆうゆう」レイディオ/Himaraya (ヒマラヤ)
・「ゆうゆう」レイディオはPodcast(ポッドキャスト)でも配信開始しておりますので、iTunesなど使っておられる方はこちらからもどうぞです。↓
●相羽裕司の「ゆうゆう」レイディオ/Podcast(ポッドキャスト)
うまく入れない場合は、iTunesのPodcastで「相羽裕司」で検索して頂けたらと思います〜。
・Twitterもやっておりますので、フォローしてやって頂けたら喜びます〜。↓
『トロピカル〜ジュ!プリキュア』第1話〜第7話の感想〜がっかり三人衆(さんご、みのり、あすか)をローラとまなつが元気にしていく序盤(ネタバレ注意) - プリキュアの感想ブログ―The Girlls Fiction Fan Blog(GFFB) https://t.co/PPdc9pf8u6 …ブログ更新です。 #precure #トロプリ
— 寂しいシロクマ(相羽裕司)/仙台市太白区 (@sabishirokuma) April 17, 2021
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→前回:『トロピカル〜ジュ!プリキュア』第20話「名探偵みのりん!消えたメロンパン事件!」の感想へ(ネタバレ注意)
→前回:『鬼滅の刃』と人魚(音声配信)へ
→次回:『トロピカル〜ジュ!プリキュア』第32話「駆けろランウェイ!さんごのファッションショー!」の感想へ(ネタバレ注意)
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