相羽です。

 『デリシャスパーティプリキュア(公式サイト@東映公式サイト@朝日放送)』第7話「強火の情熱!きらめいてキュアヤムヤム!」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 現代人は何らかの意味で「分断」された状態にあるという問題意識のもと、「ごはん」をきっかけにして「分断」を解消していこう、もう一度「再集合」しよう、「集まろう」というテーマで綴られている『デリシャスパーティプリキュア』という物語において。

 ついに登場! キュアヤムヤム・華満らんというキャラクターが担っている要素は、「家族」であるようです。


 「このスープはうちの家族の涙と汗の結晶なんだ」(華満らん)


 「家族」。「地域共同体」も「会社共同体」も機能しなくなってきていると言われる現代において、最後の砦となっている「共同体(コミュニティ)」ですね。

 「分断」へ向かえ、という世界の圧力に対する、最終防衛拠点です。

 「ぱんだ軒」のスープが出来上がるまでの、華満家の物語の回想において。

 両親・華満こしのすけさんと華満つるねさんがスープの素材を求めて海を渡る一枚においては、らんだけが生まれている。

 砂漠を放浪する次のシーンでは、妹が生まれている。

 ついに素材(昆布?)を手に入れた一枚では、弟が生まれている。

 あらゆる「共同体」は想像の産物で幻想ですが、そこには確かに大事な「記憶」を共有してここまで歩んできたという「歴史」が、「家族」という「物語」が、存在している。

 海を渡るところとか、この現代において遣唐使かっていうくらいのノリで渡ってますからね(笑)。それはそれは、らんの心に残っている、華満家という印象深い「物語」があったのだと思います。

 レシピッピと同じで、他人には見えないものかもしれなくても。らんにとっては大事なものとして、「家族」は確かに存在している。ないがしろにされてしまっては、涙を流してしまうくらいには大切にしているものとして。

 あの、元気な感じのらんちゃんにおいて。「家族」を想う涙が媒介になってデリシャスフィールド(本作では「分断」や「孤立」の象徴表現になっている)を突破して「境界」を超えてくる……という描き方には涙したところです。

 そんな、「家族」、本作的には「分断」や「孤立」を解消する側のテーゼを担っているらんに対して、対するはジェントルー、菓彩あまねということになるのですが。

 らんに向かって、こういう言葉を言い放ちます。


 「客が楽しみにしていたのは、半額という値段じゃないのか?」(ジェントルー)


 だいぶあからさまな表現だと感じた部分ですが(笑)、資本主義社会(お金が第一)の中では、「家族」の味など無意味だ、という趣旨の言葉です。

 この世界は全部お金が第一で、みんなお金の拡大を願って競争し、持てる者と持たない者へと「分断」されていく。その力学の前では「家族」とか「共同体」とか、もう一度集まろうとか、無意味なんだ、と。

 ジェントルーは、これまでもゆいたちが時間をかけてつくっている料理を、お金を払って買って帰る……という描写が繰り返されていましたが。

 このシーン、やや複雑なのですが。

 この台詞、ジェントルー、菓彩あまねは自分自身への自虐と皮肉を込めて言っていると解釈できそうなのですね。

 第5話で出てきたハートフルグミの製造(販売?)メーカーが「フルーツパーラーKASAI」なので、菓彩あまねは、(これが作中との連動要素だと仮定すると)おそらくお金に関してはお金持ち側であると推定されます。

 以前、「力の偏在」、より具体的にはお金の偏在という観点から、お金持ちの芙羽ここねとジェントルーは重ねて(同じ問題を持っている者として)描かれているんだという趣旨の考察を書きましたが。↓


参考:『デリシャスパーティプリキュア』第3話の感想〜芙羽ここねとジェントルーは富の格差(力の偏在)で翻弄され孤立するキャラクターとして重ねて描かれている


 やはり、おそらくはお金持ち(普通だったら、エスタブリッシュメント/体制側であることが多い)なのに、「ブンドル団」なんていう反体制活動に参加しているわけですから、ジェントルー、菓彩あまねも、「力の偏在」が生じる世界の中で自分には力やお金が集まっているが、満たされない何か(おそらくは「分断」や「孤立」関係)を抱えている人間であるようです。

 ジェントルー、菓彩あまねが発した、自分自身を糾弾するような、「しょせんお金でしょ」という上記発言に対して、らんも一瞬揺らぎます。

 私が信じている、「家族」のスープの味も。「家族」という「物語」も、全ては無意味だったんじゃないか? と。

 そこで鳴り響く、キュアプレシャスのお腹の音。

 人間、どんなに「分断」されてるとか「孤立」しているとか、「無意味」だとかなんだとかかんだとかだとしても、お腹はすく。

 それは、みんな同じ。

 共有できる。

 そこからはじまる、ゆい、ここね、ローズマリーらの、怒涛の「ぱんだ軒」のラーメンの食レポ。

 らんは思った。華満家という「家族」の物語は、ここでこの「ぱんだ軒」のラーメンを媒介として、ゆいとここねとマリちゃんたちにも共有されている。みんな、同じ「記憶(「ぱんだ軒」のラーメンの味)」を思い浮かべている。

 ゆい、ここね、マリちゃんだけではない、「ぱんだ軒」のお客さんたちも、同じ「記憶(「ぱんだ軒」のラーメンの味)」をシェアして、幸せ(象徴としてのレシピッピ)を感じて繋がっていたのだ、と。

 まさに、第1話の感想から書いている、「大ごはん共同体」的な展開です。


参考:『デリシャスパーティプリキュア』第1話の感想〜今日、大ごはん共同体が生まれた(ネタバレ注意)


 現行世界では無意味と一笑にフされるかもしれない、(レシピッピのように)他人には見えないかもしれない「物語」だったのかもしれないが、華満家の「家族」という「物語」は無意味ではない。少なくとも、ゆいの「美味しい」という評価と笑顔は、ソレは信じるにたるという勇気をくれるに十分なものだから。

 かくして、満を持して華満らんさん、キュアヤムヤムに変身です。

 ジェントルーの狼狽と、メンメンも勢いで火炎を吐いたりもする、らん/ヤムヤムの揺るぎない勢いがすごい。

 ジェントルー、菓彩あまねと芙羽ここねがどんなに願ってもまだ手に入れられていない、「家族」(ここねも、おそらく両親関係の何か課題があるキャラクターであろうというのが当ブログの現在の考察。この話数で、メイン三人でここねの親だけが出てきていない)、全力の情熱で打ち込める対象、「力の偏在」に惑わされない「つながり」を保ち得る無償の愛の類、らんは全部持ってるわけですから、これは強い。

 「家族」とのつながりが(おそらく)希薄で、正体を隠して(社会の「共同体」とつながれていないということ)革命運動(「ブンドル団」の活動)に参加してるなどという脆弱な基盤で現時点では戦っているジェントルーは、作中で大事なこととして描かれてきたものをマシマシで全部搭載しているようなキュアヤムヤムには勝てない。

 技もまさかのカッター攻撃で、あの調理器具二つを合わせて「閉じた」状態(なんと形容すればイイのか難しいですが)に落とされていたプレシャスを、「閉塞」を切り裂いて「解放」するという表現になっています。

 麺なので、ぐるぐる巻きにしたりするのかなと、事前の段階ではちょっと思ったりしておりましたが、ぐるぐる巻きだと「拘束」「閉塞」側の表現になっちゃうから、まさかの「切り開く」感じの技持ちなのか。

(ちなみに、ゆいさんは「パンチ」で、「拘束」「閉塞」ごとブチ壊すタイプの技持ちです。)

 「閉塞」しているのは、ジェントルー、菓彩あまねもである……という表現になっていると思うので、僕の中ではジェントルー、菓彩あまねもどちらかというと救済対象のキャラクターなんだなというのが確信されてきた感じです。

 そして、今のところ「分断」と「孤立」で苦悩する現代人代表みたいな芙羽ここねさんに対しても、ゆい一人では助けきれないかもしれないと感じていた部分に、「家族」とか「歴史」という最強の助っ人を連れて「集まって」きてくれるのがらんということで、ギャグっぽい感じになりがちな(え)黄色キュア属性を持ちつつも、全体の「物語」上めちゃめちゃ重要なポジションとして華満らんさんが本格的にストーリーに参加してきたなと。

 ここねは助かりそうで安心した部分があります。救済役がゆい一人だと、それこそ『ドキドキ!プリキュア(感想)』の時の「一人の『幸せの王子』で全員助けられるのか」問題とか出てきそうだったんですが、明朗でノリがある(え)らんさんがいてくれるので、これは何とかなりそう。

 リアル世相の方でも、戦争とか経済危機とか感染症とか、「力の偏在」とか「分断」とか「孤立」とかが意識させられる出来事って、多々ある最近なんですが、「大ごはん共同体」はそりゃ「ごはん」エネルギーで歩んでいくわけだから、起きてすぐラーメン食べたいメンメンのごとくエナジーな感じではあるわけで、世の中希望を持てるようなエナジーがあれば何とかなることも多かったりで、何か風向きが変わったと感じた、2022年4月24日のキュアヤムヤム初登場回だったのでした。

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『デリシャスパーティプリキュア』第7話時点での考察のまとめ/togetter

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→前回:『デリシャスパーティプリキュア』第6話の感想〜ロックダウン状態となった学校に、閉塞、誤解、固定観念を解消して「集まり」を取り戻していくお話へ
→次回:『デリシャスパーティプリキュア』第8話の感想〜固定観念(二項対立)を第三の道で解消する過程を通してジェントルーでも菓彩あまねでもない第三の道(プリキュア?)が拓かれ始めるへ
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