相羽です。

 『デリシャスパーティプリキュア(公式サイト@東映公式サイト@朝日放送)』第8話「ちゅるりん卒業!?おでかけ!おいしーなタウン」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 本作『デリシャスパーティプリキュア』という作品が、問題意識を向けて扱っている題材が「固定観念」なのですが。

 生徒会長・菓彩あまねが初登場する、第5話の時点の感想で、あまねは「固定観念」を広げる側、らんと拓海がそこから自由である側、という対照構造がみてとれるという話は書かせて頂いておりました。↓


参考:『デリシャスパーティプリキュア』第5話の感想〜生徒会長(ジェントルー?)が促す「固定観念」から芙羽ここねが一歩自由になっていく様子が描かれる


 ゆえに、今話から本格的に始まっているメインストーリーの縦軸の話であろう、ジェントルー/菓彩あまねの物語に、コアに関わってくるのが華満らんと品田拓海であるという展開は、オオっ! とテンションが上がるものでした。

 な、何話も前から仕込んでいる!?

 ジェントルーが前回華満らんの情熱に触れて以降、今話の描写などで頭痛(?)を感じるようになったのは、本人が気づかないレベルで彼女にとってらんがどうでもイイ人間じゃないからなのですね。

 立場上敵同士というレイヤーを超えてジェントルー/菓彩あまねはらんのキュアスタを見ていた。魂とか感性のレベルで菓彩あまねは華満らんに惹かれているということです。

 まさに、前作『トロピカル〜ジュ!プリキュア』の頃から本ブログでは考察するようになった、「プリキュア=境界を渡航する者」説に合致してるようで(らんのプリキュア化をきっかけに、ジェントルー/菓彩あまねの「境界」が揺らぎ始めている)、しみじみとしてしまいます。


参考:トロピカル〜ジュ!プリキュア/感想/第16話「魔女の罠!囚われたローラ!」(ネタバレ注意)


 世界に押し付けられる「条件づけ」を無効化して、本来の自分のまま(精神的にも物理的にも)自由に「境界」を移動できる存在=プリキュア

 ですから。

 あとちょっと百合っぽいです(え!?←らんあま!?)。

 一方、品田拓海は後述しますが、この一連の流れの中で「独占/シェア」にまつわるテーマを担って描かれ始めています。

 さて。

 作中で問題となっている「固定観念」ですが、今話では特に「二項対立(であると思い込む)」という「固定観念」について描かれています。

 白か黒か、イチかゼロか、専門的な論理学の用語を使うなら「排中律」がある、どちらかしか選べない事象……ということになりますが。

 この「世界」とは「二項対立」だ! という思い込み(「固定観念」)を、ゆいのお祖母ちゃんの言葉でいうところの、いやいや、ごはんかパンかの「二項対立」に思い込みそうになったら、第三の「うどん」という道もあったりするから! という「ゆるやかさ」で緩和していき、トータルでは物語全体に「第三の道」の可能性を浮かび上がらせる、というのがストーリー上の今話の位置づけであったと思われます。


 「ごはんかパンだけで悩むな! 迷った時はうどんもある!」(和実ゆい)


 ざっくりとですが、(最終的には)解消に向かうであろう今話で描かれていた「二項対立」についてみてみます。


●「独占/シェア」

 拓海は(現時点では)ゆいを独占したいんですね。だからハンバーガー屋に誘ってゆいと二人の時間を持って独占しようとする。

 ゆいはその拓海の志向性をかわして、ここねとらんの方に自分を「シェア」してしまう。

 この辺りの流れは、「シェア」がテーマの一つだと広報している作品で、かなりストレートに「恋愛(相手を独占したいという志向性が含まれる場合が多々)」も同時に題材に組み込んでいるあたり、一昔前の澁澤龍彦の「大事な人をシェアできるのか問題」というか、その辺にかなりの程度踏み込むストーリーはやってくれそうです。

 この愛にまつわる「独占」と「シェア」の「二項対立」は、ばんばん受け入れモードというか、自分を「シェア」してしまうゆいさんは、「危うさ」も持っている人間として描かれているので、まさにこのテーマにおける「第三の道」は、物語のコアの一つとなるであろう予感がするところです。


●「キュアスタをやめる/やめない」

 「第三の道」として、「テイクアウトして語りを中心にする」というのが描かれています。

 キュアスタ要素は華満らんさんというキャラクターの重要要素として描かれているので、この問題は今話ではまだ途中ということになりそうです。

 今話時点では、「お店の情報を載せないようにする」というある種の譲歩をしています。

 一方で、お店の位置の情報とかよりは、らんさんのキュアスタの一番のユニークな魅力は、ちゅるりんさんの独特な言語表現によるレビュー文だったというのも今話で同時に描かれていますから、よりらんさんの特性・本来性に特化した方に進んだ、と前向きに捉えることもできそうです。

 いずれにせよリアルの方のコロナ禍における「孤食」の問題なども企画の動機の一つであろうと推察される本作において、様々な面で、たとえば飲食店に関してロックダウンするかしないかの「二項対立」だという姿勢ではなく、常に知恵と工夫で次善の「第三の道」を探し続けることが大事だとは描いているので、さらなる昇華をどうもっていくのかを、楽しみにしたいところなのでした。


●「ジェントルー/菓彩あまね」

 アイデンティティの「二項対立」です。

 これ、上述してきたような、かなりしっかりとした「二項対立」から「第三の道」へ……というストーリーの流れを話数を積み重ねながら描いてしまっているので、「ジェントルー」でも「菓彩あまね」でもない、「第三の道」の存在として「プリキュア」となる(第三のアイデンティティ)……が僕の中では濃厚になってきました。

 ここから覆す可能性もあるのかな。

 その場合は、追加戦士のプリキュアは、ジェントルーかコメコメかの「二項対立」だと思った? 残念! 「第三の道」としてまったくの新キャラです! という、製作陣が視聴者の「固定観念」への皮肉を込めるという、それはそれで熱い展開ですね(笑)。


●補遺

 加えて、今話ではそこまで直接的な描写ではありませんが、作品トータルとしては、「男/女」の「二項対立」を解消する「第三の道」の存在としてマリちゃんを、「子ども/大人」の「二項対立」を解消する「第三の道」の存在としてコメコメ(赤ちゃんから大人にまで千変万化できる不思議存在)を描いていますね。


 このように「固定観念」としての「二項対立」を課題として描きながら、物語は「第三の道」を描き始めているようであるのでした。

 個人的には、華満らんさんが、「ギャグっぽいキャラクターだけど、物語の作中解を担うくらいの重要キャラクターでもある」というかなり破格の登場人物であるという点に熱いものを感じています。

 今回の脚本はシリーズ構成の平林佐和子さんではなく、永井千晶さんなのですが、シナリオチームで華満らんさんというキャラクターのコアをしっかりと共有できていないと今話のような話は作れないと思うので、その辺は頼もしく思ったりした第8話の視聴だったのでした。

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『デリシャスパーティプリキュア』第8話時点での考察のまとめ/togetter

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→前回:『デリシャスパーティプリキュア』第7話の感想〜華満らんの家族で作り上げたラーメンの味のキレが力の偏在の問題で孤立する菓彩あまねの閉塞を切り拓いてゆくへ
→次回:『デリシャスパーティプリキュア』第9話の感想〜ナルシストルーさんの強大な自我も合わせ味噌できるかは分からないけれど、とりあえずパンダとラーメンのアイコンで頑張ってみるへ
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