相羽です。

 『デリシャスパーティプリキュア(公式サイト@東映公式サイト@朝日放送)』第11話「ジェントルーの罠!ゆいとらん、テストで大ピンチ!?」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 前回・第10話のアバンで提示されたゆいのおばあちゃんの言葉、


 小さじ一杯 大事な一杯


 は、前話単体だけでなく、ここ数話のいわば「ジェントルー/菓彩あまね編」全てにかかってくる言葉であるようです。
(次回、第12話のサブタイトルにも「小さじ一杯」のワードが入っている。)

 そして、今話・第11話でゆいが「勉強ってなんでするんだろう?」についておばあちゃんに聞いた時に、おばあちゃんが語った内容というのも、上記の「小さじ一杯 大事な一杯」と関連がある述懐としてここ数話では機能していくようです。


 お米が農家の人たちに大切に育てられて、収穫されて、それをお母さんが炊いてくれるところを想像してごらんって。今までより、美味しく感じられそうじゃない? 勉強って色んなことを知って、色んな想像ができるようになるためにするんだよって。おばあちゃん言ってた。(和実ゆい)


 ざっくりとは、表面的なごはんをみているだけにとどまらず、その背後に隠れている生産とか流通の過程、そして源流であるお米農家のことにまで想像を及ぼすことができるようになるために勉強するんだよ、ということを言っているわけですが。

 この一連の述懐において、「表面的なごはん」における「源流であるお米農家」が「小さじ一杯 大事な一杯」に相当します。

 そして、全体としては「小さじ一杯」、そこに向けて「想像」を向けることができるかどうかに、ここ数話の物語上の焦点はあたっています。

 この、源流にある「小さじ一杯」的なものをちゃんと見つけるということが何なのか、というと。

 やや学問的な言葉を使ってしまうと、数多の「現象」から「帰納」して「本質」を導けるようになる能力、ということになるかと思います。

 学校の勉強で大いに意義がある部分は数学にしろ英語にしろ国語にしろ歴史にしろこの部分なので、その点で、全体のストーリーに、今話独自のネタである「学校のお勉強(を何故するのか?)」が繋がってきます。

 もうちょっと言い方を変えると、これは、


 1%の「本質」から99%の「現象」が生み出されていることを、捉えられるようになろう。


 ということです。

 その上で、(ちゃんと勉強とかして)1%の「本質」に(想像を働かせて)アクセスできる能力が身について、その1%の「本質」の「見え方」が変わってくると、そこから生み出されている99%の「現象」の「見え方」も変わってくる、ということを今話では描いています。

 拓海くんは勉強してるので(明示されてはいませんが、ややからかい気味に勉強に関してゆいに接する態度から、ゆいよりは積極的に学校の勉強に取り組んでいるのは伺えます)、99%の「現象」側から「帰納」して、何か1%の「本質」があるんじゃないか? と、ゆいが気づかなかったところまで迫ることができる。

 表面的に目に見えるウバウゾー現象(99%の「現象」)の裏に、街を壊さないとか人を傷つけないなどの、ジェントルー/菓彩あまねの想い(1%の「本質」)が隠れていることが、ゆいにも見えるようになってくる。

 そして、いったんそのジェントルー/菓彩あまねの想い(1%の「本質」)が見えるようになってくると、これまで表面上目に見えていたウバウゾー現象(99%の「現象」)の「見え方」も変わってくる。あ、ああ、第6話(感想)で級友たちを体育倉庫的なものの中に追い込んだのは、「分断」「孤立」させたという「見え方」とは両義的な裏返しとして、「ウバウゾーの攻撃から級友を守っていた」という側面もあるのね、と。

(なお、これにより、第6話の体育倉庫的なもの、と象徴的に同じ意味合いであろうマリちゃんの「デリシャスフィールド」も、作中で複数の、というか両義的な象徴的な意味合いがあるのが、ほぼほぼ、確定に。)

 それにしても、一つの存在・事象が、二つの「見え方」になる……というのは、長年のプリキュアシリーズファン的には、『魔法つかいプリキュア!』を思い出してしみじみしてしまいますね。

 え!? 『まほプリ』にそんなテーマがあったの!? という方は、とりあえずこちらの記事から読んでみて頂けたらと思います。↓


参考:リコ(=Record)が過去を赦して未来に目を向け始める〜『魔法つかいプリキュア!』第1クールのエッセンス


(基本的にプリキュアシリーズは全ての作品でコアテーマはおおむね共通しており、全てのシリーズがある意味で関連し合ってるとも言える作品群です。)

 また、このお話全体で描いている99%の「現象」の奥に1%の「本質」がある(それを見つけられるようになろう)、というテーマを、部分的な勉強パートとも関連させて描いているという高度なことを今話ではやっています。

 たとえば、"Is this my pen"にまつわる英語の勉強に関するくだりも、全体のメッセージと関連しているシーンになっていたりします。

 以下、作品自体の話というより、作品と関連する英語の話をしばらく書きますので、英語に全く興味がないという方はしばらく画面をスクロールして頂いてオーケーです。

(以下、英語の勉強の話と『デリシャスパーティプリキュア』第11話のテーマがどう関わっているかの話/)

 まず、まったく手がかりがなく、「英語」の海にダイブしてみますと。

a. This is my pen.
b. Tom breaks the window.
c. Eri feels happy.
d. Ken eats an apple.
e. I love my daughter.



 このように、いきなり99%の「英語」の「現象」に挑もうとしますと、カオスです。勉強しようにも、どこからどう手をつけてイイのか、訳がわかりません。

 そこで、1%の目に見えない抽象的な構造に気づく、という視点が大事となってきます。

 たとえば、抽象的な構造、「SVC(第二文型)」と、「SVO(第三文型)」というそのままでは目に見えないものが、勉強して目に見えるようになると、上記の5つの英文は、


●「SVC(第二文型)」
a. This is my pen.
c. Eri feels happy.


●「SVO(第三文型)」
b. Tom breaks the window.
d. Ken eats an apple.
e. I love my daughter.



 という2つに分類して捉えられることが「見える」ようになってきます。

 5つのカオスを全部暗記するとかよりも、2つの秩序を学んだ方がはるかに勉強の効率はイイです(2つを押さえておけば、5つも100も1000も、そこからの派生なので)。これが、2つの秩序側、99%の「現象」ではなく、1%の「本質」を学ぶ大事さです。

 高校英語序盤レベルの「SVC(第二文型)」と、「SVO(第三文型)」の違いは覚えておりますでしょうか?

 え、忘れている!?

 いちおう、軽く解説もしてみますと。

 「SVC(第二文型)」は、「S」=「C」の関係にあるのに対して、「SVO(第三文型)」は、「S」と「O」は=(イコール)の関係にはありません。


a. This is my pen.


 た、確かに、これ(This)とペン(pen)はイコールだ!(「SVC(第二文型)」)


b. Tom breaks the window.


 なるほど、トム(Tom)と窓(window)はイコールではない!(「SVO(第三文型)」)


 こういう感じで、先人たちが99%の「現象」から「帰納」して、1%の「本質(法則)」を導き出してくれているのですよ。

 我々は、ありがたく(そのままでは目に見えない抽象的な)1%の「本質(法則)」にアクセスしてみる。それが、勉強の意味の一つです。

 ちなみに、一時、詐欺的な……、おっと、事象の一側面だけをあまりに強調し過ぎた広告で猛威をふるっていた、「聴くだけで英語が身に付きます!」系の勉強法ですと、英語の勉強という遠大な営みを大きな山登りに例えるとして、一合目くらいまではギリギリ行けるかもしれないけれど、三合目より上はまず無理、という感じです。

 せっかく貴重な時間やエネルギーを投資するなら、是非ちゃんと使えるレベルまで到達してほしいので。(感覚的に、五合目くらいまでくると、世界が変わります。)

 おとなしく、まずは五文型を使いこなせるようになるトレーニングから始めましょう。

 さらに、


・Is this my pen?


 を勉強する意味は。

 表面的に見えている、疑問文の、


・Is this my pen?


 のカタチから、「本質」であるもとの英文、


a. This is my pen.


 を(頭の奥の方で)導けるか? というトレーニングも兼ねています。

 これも、99%の表面的な「現象」だけを見ていると、疑問文? 命令文? 果てには仮定法に仮定法過去完了に、何なの、カオス!? 意味が分からない! と途方にくれてしまうので、

 99%の表面的な「現象」の奥にある、(そのままでは目に見えない)基本的な1%の「本質」のカタチを見破る力、というものが大事となってきます。

 基本的な1%の「本質」のカタチを極めた人は、あとはそこからの変形で、どんな複雑な文法事象も矢継ぎ早に攻略できるようになるので。

 というわけで、そのままだと表面的かつカオスに見える「英語ぜんぶ」という99%の表層の「現象」から、そのままでは目に見えない1%の「抽象的な文法構造」という「本質」を「見える」ようにしていくのが「勉強」である、という「勉強」パートのシーンは、エピソード全体の、じゃあ、ジェントルー/菓彩あまねというキャラクターの1%の「本質」とは? というテーマにかかっていく要素としても解釈可能なお話となっているのでした。

(/以上、英語の勉強の話と『デリシャスパーティプリキュア』第11話のテーマがどう関わっているかの話)

 ちなみに、この抽象的な構造を認識できるようになる能力のような、99%の「現象」のエッセンスとなるような1%の「コア」な能力・活動こそが、『トロピカル〜ジュ!プリキュア』では、「トロピカる」活動として描かれていた、と、『トロピカル〜ジュ!プリキュア』放映当初の感想では解釈していたりしました。↓


参考:「トロピカる」というAct(行動)の質の向上〜『トロピカル〜ジュ!プリキュア』第1クールのエッセンス


 ヤラネーダで騒ぎを起こすとか、やる気パワーを集めるとかは、魔女様にとっては実は表層的な99%の事柄で、魔女様にとって最もコアな1%は、「アウネーテと友だちになりたい」だった! という物語が『トロピカル〜ジュ!プリキュア』だと思うので、そう大きく外れてはいなかったのでは? と今になって振り返って思ったりもします。

 ここまでは、主にゆいの視点から、ジェントルー/菓彩あまねの99%の「現象」ではなく、1%の「本質」を見つけよう、という話でしたが。

 この物語要素は、ジェントルー/菓彩あまね側の視点から、自分自身の本当のコア、1%の自分という人間の「本質」を見つけ、そこにかえることができるのか? という内省的なドラマとしても描かれています。

 現在、赤瞳あまねと青瞳あまねとに別れていて、時に両者が部分的に対話するという表現で描かれているので、ややもするとスピリチュアルな感じもしてしまうのですが、スピリチュアル方面の話とかも好きな人向けに言ってみるなら、これはいわゆる「インナーセルフ(内なる自分)」とかの話として描かれていると思います。

 もうちょっと一般的な言葉でいうなら、「深層心理」が近いでしょうか。表層に出ている99%の自分の心の奥に、1%くらいのコアになっている「深層心理」がある、みたいな捉え方は、一時の心理学ではとても注目もされていました。

 宇宙の法則的には(え)、自分が発信するものが、自分にかえってきます。

 他者に対して攻撃的な人は攻撃されるようになりますし。他人をジャッジばかりしている人は、自分もジャッジされるようになります。

 そういった法則にのっとり、他人をあざむく人は、自分のこともあざむいているのですね。

 今話では、ゆい、ここね、らんの問題だけすり替えるというカタチで、ジェントルー(赤瞳の菓彩あまね)は他者をあざむいています。

 それゆえに、裏返しとして自分自身をもあざむいているので、彼女は自分自身の1%の「本質」・「インナーセルフ(内なる自分)」を正直に見つけることは今話ではまだできていない状態なのですね。

 99%の「現象」としての彼女の悲劇は、1%の彼女の「本質」・「インナーセルフ(内なる自分)」的なるものから生み出されている。彼女の1%の「本質」・「インナーセルフ(内なる自分)」が、ジェントルーが気を使っていたジェントルさなのか、はたまた青瞳あまねなのかはちょっとまだ分からないですが(僕としては前回の感想から書いてますが「両義」存在になって紫瞳になる展開が一番しっくりきたりします。)、彼女自身が、ゆいが拓海の洞察を通してたどり着いたように、あるいはごはんからお米農家まで源流を遡っていくように、彼女の1%の「本質」にたどり着き、(あざむかず)受け入れ、前に進む必要がある。

 ……と、勉強にまつわるパートのような部分と全体のストーリー・テーマが関連し合いながら展開される技巧と、一人の登場人物の心の内側に少しずつ迫っていくという内省的で静かな語り口がイイ感じで展開されているなと思ったりした、第11話の視聴体験だったのでした。

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→前回:『デリシャスパーティプリキュア』第10話の感想〜レシピッピとは何なのか、喪失とか子どもの頃の幸福とか菓彩あまねとジェントルーの状況とか色々分かってくるお話へ
→次回:『デリシャスパーティプリキュア』第12話の感想〜キュアフィナーレに向かって、バラバラだった人間、家族、運命などがもう一度集まりはじめるお話へ
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