『デリシャスパーティプリキュア(公式サイト@東映/公式サイト@朝日放送)』第31話「おいしーなタウンの休日 プリンセスゆい!?」の感想です。
ネタバレ注意です。
「自分が生まれた場所との再契約」という、今後の拓海の物語(おそらくメインストーリー関係)に繋がりそうな、そこへ向かっていく土台を整えてるようなエピソードだと思いました。
今話、「入れ替わり」と「異文化交流」のお話なのですが、「異文化交流」を肯定すること自体が、門平とあんの「異文化交流」で生まれた拓海の存在を肯定するという構造になっているのですね。
今話冒頭、まずは「水平」の「パーティ(あつまり)」の視点として、遠くはイースキ島からマイラ王女御一行がおいしーなタウンへとやってくるのですが、そのきっかけを作ったのが門平と門平が送った招き猫という、重要な前提がさらっと描かれています。
情報量が多いのですが、拓海の父、門平というキャラクターが、うちのブログの感想ではずっと書いてきた本作の物語における「源流」の要素を担うキャラです。加えて、招き猫はゆいのお祖母ちゃんのよねさんの関係でおいしーなタウンに広がったことが近話で明らかにされており(感想まだ書いてないけど、そのうちね!)、こちらもお祖母ちゃん関係でより「源流」要素を含んでいます。こちらの、過去、「源流」関係は「垂直」の「パーティ(あつまり)」の視点とでも言いましょうか。
そのような、「水平(場所的な異文化交流)」と「垂直(時間的な『源流』要素)」が交差する場所で、ゆいとマイラ王女の「入れ替わり」が行われます。
「水平」と「垂直」の地平を超えて、ゆいとマイラ王女という表面的な「役割」や「アイデンティティ」を超えて(入れ替わっちゃてるので)、「守りたいもの」があぶり出されていく構成なのですが、「守りたいもの」が何なのかは、今話でわかりやすい課題っぽく描かれていた、「マイラ王女は(あんまり)話さない」に関する評価をみていくと分かっていきます。
「マイラ王女は(あんまり)話さない(スピーチも原稿を準備している)」という事象に関しては、サンザーさん(マイラ王女のいとこ)のネガティブ評価としては「失敗するのが怖いから(逃げてる)」ということとなり、ゆいのポジティブ評価としては、「入念に準備していた、うまくいかないことがあっても逃げずに頑張ってる人」、ということになります。いずれにしろ、マイラ王女がそうまでして「守りたいもの」が何だったのか? というところに収斂していきます。
ここから、マイラ王女とゆいが、というか本作の物語で「守りたいもの」が何なのか? が、ゆいとマイラ王女の「入れ替わり」をとおして描かれていきます。今話は特に精密脚本っぷりが光っていますね。
「守りたいもの」の確認その1。「入れ替わり」劇の定番ですが、入れ替わった先でそれぞれが出会ったものが、入れ替わる前は気づかなかった大事なものとして、再獲得されていきます。
ゆいの方が出会ったのは、主にはゲンマ・イタックさんという人物。これは、おそらくゆいにとっての「不在の父」です。
ゆいのお父さんのひかると拓海のお父さんの門平が長い漁に出ていて「不在の父」状態というのが本作の物語の特徴ですが(それゆえに、二人のお父さんが帰ってきた時が、本作の物語の最終章の始まりであると推定されるわけですが)。今回、お父さんそのものはまだ帰ってこないのですが、ゲンマさんが比喩的にゆいと拓海の「父」像になっているのだろうと。
ざっくりとは、「影ながらフォローする、見守る」という「父」像です。娘ポジションのゆいとマイラ王女の秘密に気づいても、影ながらフォローしてくれたわけです。ゲンマさんをとおして、ゆいと拓海のお父さんもそうするんだろうな、というか今もそうしてるんだろうな、という、いわば「父」の「入れ替わり」をも表現しているわけです。
今回は詳しく踏み込みませんが、以前書いたようにプリキュアシリーズは「トーテミズム」的な考え方をとっているところがありますから。
参考:魔法つかいプリキュア!感想/最終回「キュアップ・ラパパ!未来もいい日になあれ!!」(ネタバレ注意)
ゲンマさんが、あるいはゆいの父、拓海の父だったかもしれないね、という感覚は、『魔法つかいプリキュア!』で、みらいはリコだったかもしれないし、リコはみらいだったかもしれないね、という想像を喚起する描き方をしていたのに通じる感覚だったりするわけです。
「入れ替わり」劇による、他者(誰か)が他者(誰か)だったかもしれないという想像力の拡張……というのは、ある意味プリキュアシリーズのお家芸なのですね。
ゲンマさんはゆいの父であり、拓海の父でもあるかもしれない想像力、ということで、大きい物語的に、ゆいの父も拓海の父も、娘、息子の秘密に気づきつつフォローしてるんだろうな、というのを考えるのはそう飛躍するものでもなく、物語終盤で色々明らかとなってくるのだろうと思います。
一方、マイラ王女が「入れ替わり」中に出会ったのは、友だち(あまねたちね)、忘れていた食べ物の「好き」。この二つは、本作的にはこれまでの感想で何度も書いてきたように、作品のテーマとしての「パーティ(あつまり)」要素です。つまり、マイラ王女は「入れ替わり」中にまさに「デリシャスパーティ」と出会う構造になっているのですね。
「忘れていた子どもの頃の気持ちとの再会」という構図は、公開中の映画『映画デリシャスパーティプリキュア 夢みるお子さまランチ!』とも通じる要素です。
参考:『映画デリシャスパーティプリキュア 夢みるお子さまランチ!』の感想〜8年前のイノセントな気持ちをお子さまランチにしてわけてゆく(ネタバレ注意)
「守りたいもの」の確認その2。ゆいが「入れ替わり」中に出会ったもう一つ、わりと大きいのはサンザーさんらですね。ゆい、普段はあんまり、こういう権力争いだ! みたいな「条件付きの世界」に生きてる人とは接点がないんですよ。いきなり「条件付きの世界」とか専門用語が出てきてなんだという方は、こちらの『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の感想記事で詳しく解説してますので(唐突にガンダムの話!?)、理解を深めたい方はこちらもよろしくです。↓
参考:『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第1話の感想〜「無条件の世界」による「条件付きの世界」への反撃の狼煙(ネタバレ注意)(追記あり)(管理人のメインブログ)
ゆいがこれまであんまり接してこなかった悪意、「条件付きの世界」と接する……のも公開中の映画要素ですね。ケットシーさんを搾取した大人たちと、今回のサンザーさんらが、悪意、とはちょっとニュアンスが違うんだけど、「条件付きの世界」で生きてしまっている人です。そういうものもある「世界」だ、という前提でどういう未来を選び取るのか、という段階に物語が入ってきてるので、時期的にも十月ですし、物語ももう後半に入ってるんだな〜という感じです。「入れ替わり」劇的には、もちろんゆいがいかに普段は「無条件の世界」で生きていて幸福かというのをあぶり出す仕組みともなっています。
そして、マイラ王女の方が「入れ替わり」中に出会ったもう一つ、兄妹愛と愛する人(あえて幼馴染じゃなくて、こう表記するぞ!)です。あまねの兄、菓彩ゆあんと菓彩みつきという「無条件の世界」の代表からパフェをおくられて、自分の「好き」を思い出すという経験をします。(今にして思うと、ゆあんとみつきは、ジェントルーとして「条件付きの世界」でボロボロになったあまねが休める、休憩場所としての「無条件の世界」の住人っていう感じの物語上の役割だったのですね。)
そしてマイラ王女、「入れ替わり」中に拓海とも出会います。よかった! 拓海、マイラ王女がゆいでないことに気づいた!(若干、危なかったですが……) 拓海は、ゆいの「条件」をみていたのではなく、ゆいの「人間」をみていたのです。「無条件の世界」側の住人だったのです。これは、ここまで書いてきたように兄妹愛、家族愛、そしてあんさんと門平さんの間にあった「無償の愛」の類ですから。恋愛要素っていうか、拓海は「源流」からあった「無条件の世界」の愛に、ゆいをとおしてもう一度出会えそうだと、物語上の救いも見えてきてよかったです。もちろん、「入れ替わり」劇的には、マイラ王女の目線を通して、ゆいがいかに普段友だちにしろ拓海にしろ、「無条件の世界」の人たちに囲まれて恵まれているか。『スマイルプリキュア!(感想)』的な「今、そこにある幸せ」に気づく的な構造となっています。
……と、父、兄妹、愛する人、などなど、もう今話で描き出した「水平」と「垂直」が交わる「永遠」の領域にあるかのような「守りたいもの」、もうお分かりですね?
「おいしーなタウン」です。
少し言い方を変えると、大「おいしーなタウン」共同体(パーティ)ですかね。
父が、母が、友だちが、愛する人が、いる場所。お祖母ちゃん、今は知らない「源流」、大事な人たちがいた場所。
最後の方、プリキュアたちによる「デリバリー」の途中、美しい「おいしーなタウン」の風景が描かれているのが地味に感動的です。マイラ王女にもそれはある。「イースキ島」、それが彼女が「好き」で守りたい場所と、彼女は「自分が生まれた場所との再契約」を果たします。
もちろん、今回は「入れ替わり」劇ですから、それはゆいにとっての「おいしーなタウン」です。
ここで、今話が門平が送った招き猫から始まっていたのが回収されます。招き猫=「おいしーなタウン」の象徴。
これさ、「こ」さんも言ってたんですが、
ばーちゃんが置き始めた招き猫が町中で流行って、、、まではわかるけど、中心にドデカモニュメントが建造されるのはいきさつが分からん。 #precure #デパプリ
— こ (@ko81818) October 2, 2022
招き猫はゆいのお祖母ちゃんから広まったのはイイとして、あの大きい招き猫は何なんでしょうね? エピソードが今後描かれるのかとも思いますが、僕的には、あのビッグ招き猫はゆいのお祖母ちゃんのパートナーでエナジー妖精的な、というか日本の「変化(へんげ)」の類で、ラスト2話くらいで動いて絶体絶命のピンチにゆいたちを助けてくれる説を押したいです(キリっ)。
というわけで、「自分が生まれた場所との再契約」のお話でありました。これまで書いてきた通り、拓海が終盤で何らかの「源流」からの「呪い」(と、捉えることもできてしまうもの)と向き合う展開が予見される気がしてるのですが、拓海が生まれた場所、門平さんとあんさんが出会った「おいしーなタウン」が最後に救いになってくれそうで安心してきた面があります。やっぱり、招き猫ですね。招き猫フォームとか、やる時はやりますからね。プリキュアは……。
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『デリシャスパーティ?プリキュア』第1話の感想〜今日、大ごはん共同体が生まれた(ネタバレ注意) - 少女創作ファンブログ―The Girlls Fiction Fan Blog(GFFB) https://t.co/1g39Gzrcfb …ブログ更新です。 #precure #デパプリ
— 寂しいシロクマ(相羽裕司)/仙台市太白区 (@sabishirokuma) February 6, 2022
・ブログに書ききれない考察を「つぶやき」で展開しておりました。「トゥギャッター」さんにまとめさせて頂いていたので、よろしくです(9000PV達成感謝!)。↓
●『デリシャスパーティプリキュア』第31話時点での考察のまとめ/togetter
→コメコメ(キュアフレンズぬいぐるみ)
→Blu-ray、Amazonさんの全巻購入セットの特典イラストの情報が出たのです。油布さんの描きおろしなのです。
??#デパプリ BDBOX??
— プリキュア音楽&映像商品公式 (@precure_marv) August 14, 2022
Amazon全巻購入特典のイラストが完成??
??全巻収納BOX
??B2ビジュアルクロス
油布京子さんの新規描き下ろしイラスト?
オシャレしてみんなでショッピング??
ゆい、あまね、ここね、らんの私服姿がカワイイ??
御予約はこちら??https://t.co/2PjVVR55Ok#プリキュア #precure pic.twitter.com/7UDzV6OpKZ
→前回:『映画デリシャスパーティプリキュア 夢みるお子さまランチ!』の感想〜8年前のイノセントな気持ちをお子さまランチにしてわけてゆく(ネタバレ注意)へ
→前回:『デリシャスパーティプリキュア』第28話の感想〜コメコメを中心に本来性の共同体が発現するも呪いが解けないナルシストルーにはまだ届かないというお話へ
→次回:『デリシャスパーティプリキュア』第35話の感想〜芙羽家の新たなる食卓が創造され最後はゆいのお祖母ちゃんがあの世からリモート参加しそうな気運が高まってきた(え)ようなお話
→『デリシャスパーティプリキュア』感想の目次へ