20230211mashiro

 相羽です。

 『ひろがるスカイ!プリキュア(公式サイト@東映公式サイト@朝日放送)』第2話「ヒーローがおうちにやってきた!?」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

●『ひろがるスカイ!プリキュア』の「構造(主人公たちを取り巻く世界)」について

 「スカイランド」と「ソラシド市」という具体的な場所の他に、もうちょっと抽象的なレベルの話も書いてみます。

 まず、異世界人であるソラが携帯の電子音、エスカレーター、パッパーくんなどに驚く様子などを描くことで、視聴者の我々の感覚では普通である「現代文明」(特に「機械文明」)は「当たり前ではない」ということが浮かび上がるようになっています。

 ゼロベースで考えたら、もっと別の世界(構造)もあり得るかもしれないのに、「ソラシド市」というか視聴者の我々の世界は「機械文明」。

 リアルでいう、海外の異文化を知ってはじめて自分の国の文化の本質が分かってくるみたいな話で、異世界人のソラ&「スカイランド」という異なる系統の文明(世界)という鏡を見つめることで、我々の「現代文明(機械文明)」ってなんだ? その本質は? という思考と情感が浮かび上がる感じになっております。

 デフォルトで自明ではない、この「世界」を前提にするからこそ、そこで出会った二人の実存の輝きが増します。「世界」という表層のレイヤーが剥がれ得るところで、剥き出しの二人の少女の「たましい」が出会ったのです。

 SF百合どころか、神話百合!?

 取り乱しました……。

 そして、「構造(主人公たちを取り巻く世界)」に関してはもう一層、やはり「時空」という要素が本作にはあるようです。

 ましろのおばあちゃん(虹ヶ丘ヨヨ)が、鏡(ミラーパッド?)をとおしてソラとましろの様子を見ています。第1話でソラとエルちゃんが通ってきたホールのようなものが何なのかみたいな話もあり、明らかに「時空」関係の何かが本作にはあります。後述しますが、そこにおそらく「時間」が関わってきて、この「時空」も「時間」も広大な「世界」で、ソラとましろは出会った。これを、おばあちゃんの言葉を借りるなら「運命」と呼ばずしてなんというのだろう。

 そう、宇宙神話運命百合!?

 取り乱しました……。


●『ひろがるスカイ!プリキュア』の二人の「実存(登場人物)」について

 そんなゼロベースで考えはじめたら宇宙的で神話的に広大な「構造(世界)」の中で出会った、ソラ・ハレワタールさんと虹ヶ丘ましろさんという二つの「実存(たましい)」。

 まずは、ソラさんが姫と騎士という主従契約を持ち出そうとして、ましろさんが「友だち」と返すという、「騎士契約の不成立」が描かれます。

 二人の現時点での人生観が表れていて面白い箇所です。ソラは「捧げたい」と思い、ましろは「対称でありたい」と思う。いづれ掘り下げて書いてみたいトピックですが、ソラは「自己犠牲」的で、ましろは「自己実現」的という対照でもあると思います。

 「自己犠牲」は言葉が強いかもしれないですが、ソラさんが現時点では「ヒーロー」の求道 に邁進してきたあまり、「余白が少ない人物」として描かれているのは、ほぼほぼ確かかと思います。

 今話だと、「服」が「余白」として描かれていて、「服」に回すリソースは(興味はあるのだろうけど)「ヒーロー」の求道に回してきたと語るソラさんに、ましろさんが「服」を選んであげるという流れが描かれます。

 ましろさんは、ソラさんに余白をもたらす者でもありそう。実際、余白が少ない「自己犠牲」型のヒーローって、(リアルの方の世情などを鑑みても)もう「世界」は救えないんですよね。

 これまでの「余白」が少ない、ちょっと「自己犠牲」的志向をはらんだ「ヒーロー」求道の結果である今の自分が、まだ至っていないのにソラさん自身はけっこう自覚気味。幼い頃に憧れた「本物のヒーロー」にはなれてないのは分かっている。

 一方で、そんなソラを「震える気持ちを抱えているのも込みで」、ましろは「本物のヒーロー」を見ちゃったと述懐します。

 「本物」と「偽物」。東映さんがこの十年あまり取り組んできた「ヒーロー」という題材にあたっての重要な概念です。

 ソラがずっとつけてきた「私のヒーロー手帳」は破り捨てられてしまいましたが、ましろから新しい手帳がプレゼントされます。

 いわば「代わり」の「偽物」の手帳なのですが、そのニュアンスは前向きに感じられます。

 「ヒーロー」性とは、たぶん「本物」とか「偽物」とかの表層のレイヤーを超克した場所にある、「何か」。

 「不思議(やはり魔法的な何かなのだろうか)文明」のソラの世界と、「機械文明」のましろの世界とに、同じ「手帳」というものがあった。この広大な宇宙、神話、時間の中で、ソラとましろの「たましい」をかたどった、何か同じカタチの「普遍的なもの」があるのだ。


●『ひろがるスカイ!プリキュア』の「構造(主人公たちを取り巻く世界)」と「実存(登場人物)」について

 再び、「実存」から「構造」にちょっと視点を移すと、これ、やっぱり「時間」の要素がある作品っぽいですよね。

 ソラが子供の頃に出会った憧れのヒーローと、ましろのおばあちゃんの髪の色・髪型が似ていることもあり、それを言い出すと、憧れのヒーローとエルちゃんも何か似たような印象のビジュアルをしているような気もします。何らかの「時間」要素が絡んでくるギミックがありそうかと。

 「大回転プリキュア返し」もなんか昭和のノリですし、そもそもプリキュアシリーズ20th作品で、子供の頃にプリキュアを観ていた視聴者が現在大人になって本作に触れたら……というテーゼもありそうな作品です。

 「メタフィクション(現実も絡めた創作)」の視点も含めて、男の子プリキュア、成人プリキュア、と配置していると思われるので、これ、おばあちゃん変身もあり得ますよ(マジで!?)。

 カバトンの名前を、ザブトン、カツ丼と呼び間違えるのも歴代ネタと思われますが、「座布団」はともかく「カツ丼」は、和実ゆいだったらカバトンさん食べそうネタ的に際どいなと思ったりする、日曜日の午前中にこの文章を書いています。

 「構造」と「実存」が関係し合いながら、「世界」が広がっていく兆しを感じさせてくれる第2話。

 僕の人生の中でも、大切なものとなる「物語」が始まった気がしています。

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虹ヶ丘ましろさん/pixiv

→『ひろがるスカイ!プリキュア』主題歌シングル



→キュアフレンズぬいぐるみ



→前回:『ひろがるスカイ!プリキュア』第1話の感想〜大人になったら末法の世になってたが、子供の頃のマクシム(自分との約束)を胸に虚構のヒーローが現実でもう一度立ち上がるへ
→次回:『ひろがるスカイ!プリキュア』第3話の感想〜なぜプリキュアは踊るのか?天球の音楽で舞う日常と非日常の境界のお話へ
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