相羽です。

 『ひろがるスカイ!プリキュア(公式サイト@東映公式サイト@朝日放送)』第7話「ドキドキ!転校生はヒーローガール!!」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

●「転校初日」という定番のエピソードで「外」から「共同体」の「内」に貫入してきたものをどう受け入れるかという題材を描いている

 今回のお話は、「転校初日」という日本のアニメでは定番のエピソードをやりつつ、「スカイランド」という「外」の「共同体」からやってきたソラさん(実はガチの異世界人でもある)を、「ソラシド市」の学校という「共同体」の「内」に受け入れるには、何が必要なのかという題材も扱っているものだと思うのですね。

 ソラさんは思ったより友だちがいなかった、孤独だったということを気にしていて、当初は友だちの輪(これも「共同体」)に入りたくて、自分の本質(「ヒーロー」を目指していることなど)を抑制してしまうのですが。

 ましろさんと桜をみて、ましろの話を聞いたことをきっかけに、自分の本質を解放する方に方針転換、トータルでは、「ソラシド市」の学校という「共同体」にほぼありのままの自分で加わることができました! というような流れです。

 ちなみに、桜はおそらく、自然なものとして自分の本質を咲かせてよいというようなシンボル的な意味合いになっており、また桜→ましろ→ソラ……と、「ありのままでいること」が伝達していく構造になっているのも美しい感じです。


●ソラの周囲とカバトンさんとの違いは「境界領域」性の受容の有無

 対比されてるのがカバトンさんで、彼も学校への侵入を試みる、いわば「共同体」の「内」に入ろうとするというソラさんと同じことを試みているのですが、こちらは失敗してしまう。この違いを生んだものは何なのか?

 この点を、僕は「境界領域」性を受容するかどうか、であると考察します。

 カバトンさんは「強い」にすごい価値を置いているのですが、なんか強いか弱いかの二項対立的で、ゼロかイチか、がまず思考の基盤にあって、その上で数字(それこそRPGゲームのレベルのようなものを想定している感じ)をより増大させたものが「強い」みたいな感じです。

 これが本当、世の中の一側面では確かにあるのですが、なんかもう感覚としては「古い」感じです。思考の土台がゼロかイチかで二項対立的で、かつ強いか弱いかで二項対立的なので、もう、「共同体A」と「共同体B」が接触したら、どちらが強いか、戦争だ! みたいなことになりやすいのです。この思考で「ソラシド市」の学校という「共同体」におもむろに入ってこられても、ちょっと事がうまくは運ばない感じです。

 一方で、ソラさんとましろさんをはじめとするクラスメイトたちの方に何があったのか? というと、それが「境界領域」性で、ゼロかイチかという二項対立的なものではなく、「山」と「里」があるとして、間に「境界領域」として「里山」を置くというような「やわらか」な思考を彼・彼女らは持っていた点です。

 よい意味で、「共同体A」と「共同体B」の間に、お互いが「相互貫入」できる「境界領域」を設定しているような思考をこちら側はしています。

 眼鏡の男子生徒、軽井沢あさひ君が言っていた、


 「スカイナビアだっけ? スカンジランドだっけ? まあ何でもイイや。遠くの国からようこそヒーローガール」(軽井沢あさひ)


 というセリフが今話のMVPだと思いますが、このどこの国か、「共同体A」なの!? 「共同体B」なの!? はっきりして! 領土の線はどこに引くの! みたいな方向ではなく、よい意味で曖昧でゆるくてざっくりでイイ思考の態度こそが、「境界領域」的で日本的には歴史的に神仏習合とかを成立させてきた思考基盤であると思います。なんか、神社の隣にお寺がある!? 自然に!? というかたちで、なんか、ソラシド市民の隣にスカイランド人がいる!? 自然に!? という「境界領域」的なよい意味でのゆるやかさを今話はあわく描いていたと思います。

 ここ数年のプリキュアシリーズでは、「プリキュア」は「境界渡航者」である説を個人的に提唱しているのですが、特に15周年の『HUGっと!プリキュア(感想)』以降のシリーズは、このことを強く感じます。

 『トロピカル〜ジュ!プリキュア(感想)』のローラが、そんな「境界領域」性を体現していたような存在ですよね。人魚でもいいし、人間でもいいし、プリキュアでもいい。そのようなよい意味でゆるやかな存在を受容する態度と、今話の「スカイナビアだっけ? スカンジランドだっけ? まあ何でもイイや。遠くの国からようこそヒーローガール」の精神は、かなりの程度重なるものだと思います。


参考:トロピカル〜ジュ!プリキュア/感想/第16話「魔女の罠!囚われたローラ!」(ネタバレ注意)


 このリンク先の記事内で書いてる、近年のプリキュアとは何か? の話、自分で書いていて何ですが、けっこうイイ気がするのでもう一度再掲しておいてみます。

世界に押し付けられる「条件づけ」を無効化して、本来の自分のまま(精神的にも物理的にも)自由に「境界」を移動できる存在=プリキュア


●キュアウィング登場の物語のキーは「境界」の「外」へか

 そして、この「境界領域」性に視点を向けると、今話は次回以降のキュアウィングエピソード(おそらく)への布石になっているお話でもあったと捉えられそうです。

 多くの視聴者が予想しているとおり、虹ヶ丘邸にいるあのオレンジの鳥がキュアウィングに変身するのだとすると、あの鳥、ずっと虹ヶ丘邸の敷地内という「境界」の中に留まっているのですよね。

 そして、次回のサブタイトルにある「飛べない鳥」のフレーズ。

 ここから予見されるキュアウィング登場の物語に、神話的には、神話上の「鳥」と「●」の対立とは……? という話が関わってくるのですが、長くなってきたので、そちらの方の話は本日のYouTubeチャンネルの配信の方でしようと思います。

 本作における、「鳥」とキュアウィングが担っているテーマについて。

 たぶん、現在の僕の考察でそうそう外してないのでは、と思ってたりするのですけどね〜。

 というわけで!

 先週の日曜日(12日)は、YouTube Liveでの「ひろプリと神話の話をするライブ配信」の実験を行っておりました。

 実験に付き合うかたちで観にきてくださっていた方々、本当にありがとうございます!

 いや〜、YouTube Live配信、難しいです。色々操作しながらも、ノリノリで喋ってるYouTuberの方々は凄いんだな! と実感中です。

 ただ、それでもやっぱりこの配信サービスで行こうかなと思えたので、これからは、毎週日曜日の22:30〜23:10分に、その日の朝放映分の『ひろプリ』の感想をネタバレでお話しつつ、神話の話も絡めていく! というYouTube Live配信を定期的にやっていきたいと思います。

 12日(日)の実験配信の分は、アーカイブが残ってるので、タイミングが合った時によかったらどうぞです。最初の5分くらいは配信環境の準備とかしてるので飛ばしてイイかもです。

 初めての試みということもあり、たいへんにたどたどしい配信となっておりますが、いちおう、『トリスタンとイゾルデ』の話をプリキュアに絡めた話とかもやっております。

 ↓


『ひろがるスカイ!プリキュア』第6話の感想と神話のお話【お話中心お絵描き実験配信】/YouTube Live(アーカイブ)


 配信中に描いた図はこちら↓

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 これだけだとどういうプリキュア感想配信なんだという感じですが(汗)、『ひろプリ』第6話はソラとましろのアムールが社会規範とぶつかる構図、といった視点から『トリスタンとイゾルデ』の話などを絡めながら語っておりました〜。

 YouTubeチャンネルも開設しましたので、チャンネル登録もぜひよろしくです。ほぼほぼ徒手空拳で配信の世界に飛び込んでみたカタチですが、まずはチャンネル登録者30人を目指して努力していく所存です!


『プリキュアの感想と神話のお話』/YouTubeチャンネル


 本日(3月19日:日)も配信URLは時間(22時30分)になったらTwitterに投稿しますので、試聴のタイミングはTwitterの方をチェックしておいて頂けたらと思います。文章だけじゃなく、話してる相羽さんに興味があるゾという方もお気軽にどうぞ。本日夜にお会いしましょう!

・Twitterもやっておりますので、フォローしてやって頂けたら喜びます〜。↓



→スカイミラージュ



→キュアフレンズぬいぐるみ



→前回:『ひろがるスカイ!プリキュア』第6話の感想〜トリスタンとイゾルデのように、ソラとましろがアムールのカタチの愛を社会秩序との間でどう扱っていくのか的なお話へ
→次回:『ひろがるスカイ!プリキュア』第8話の感想〜ソラとツバサが理想を追う中で禁忌に踏み入り辛い思いをするとしても、それでも飛ぶことを諦めない仲間であるといったお話
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