『ひろがるスカイ!プリキュア(公式サイト@東映/公式サイト@朝日放送)』第10話「むむむ!思い出の料理ってどんな味!?」の感想です。
ネタバレ注意です。
●当初の理想どおりの自分にはなれなかったけれど、次善の自分なりの輝きが見つけられる、そっちの方がけっこう自分の本質的な光だったりもする話
当初思い描いていた理想の自分にはなれなかったけれど、次善の自分なりの「ヒーロー」として本懐は生きていける。
……という、メモリアルシリーズとして前回15周年の『HUGっと!プリキュア(感想)』のテーマの継承の色合いが濃いと思ったエピソードでありました。
つまり、「かつて子供の頃にプリキュアシリーズを観ていて、今、大人になって社会人とかになってる視聴者(メモリアルシリーズのターゲット視聴者のひとつ)」向けのメッセージが強めだと感じたエピソードだということです。
子供の頃に理想として憧れたプリキュアのような大人に、そのままはなれなかった。『HUGっと!プリキュア』でも、野乃はなさんは前髪を切りすぎてしまって、当初思い描いた理想のイメージどおりの「イケてるお姉さん」にはなれなかった。でも、前髪切りすぎちゃったなりの、ふさわしい自分として、自分の本懐を全うしながら生きていけばいいさ、みたいな話です。
今回のヤーキターイとタイヤキの関係に、この話を当てはめると。
・ヤーキターイ(子供の頃に抱いた当初の理想)
|
・現状で再現可能な様々なタイヤキ(現実の自分なりの次善の試行錯誤)
という感じです。
当然、この構図が、ソラさんにおいては、
・子供の頃に憧れた理想の「ヒーロー」
|
・現在の現実のまだまだ「ヒーロー」に至れていない自分
という理想と現実のギャップに当てはまりますし。
ツバサくんにおいては、
・子供の頃に憧れた理想の「飛ぶ」
|
・現在の現実のまだまだ「飛ぶ」に至れていない自分
という理想と現実のギャップに当てはまります。
この理想と現実のギャップを、ソラさんもツバサくんも「苦行」めいた求道で埋めようとしているのですが、その「苦しい感じ」に、ましろさんが緩衝材になってるみたいな話なのですね。
前回のYouTube Live配信(こちら)でちょうど、ソラとツバサは「こだわり(「ヒーロー」になる、「飛ぶ」など)」があるから、「苦しい感じ」。ましろは「こだわり」がないから「楽」を宿している感じ……といった趣旨の話をしましたが。
ましろさんは「こだわり」がないので、理想のヤーキターイを設定しつつも、そこに至るまでの現実をけっこう楽しく試行錯誤する感じで、様々なパターン試したりできる人なんですね。
全パターン、まあオールオッケーのゆるやかな態度。それすなわち、当初思い描いた理想の自分にはなれなかったけれど、次善なりに様々に生きてる現実の「みんな」に対して、全パターン、まあ、オールオッケーさ、みたいな態度です。
そのオッケー感の中には、現実の現時点でのソラもツバサも含まれますから、これはもう、ソラさんもツバサくんも、ましろさんを拠り所にしちゃいますよね。
エピソード中ではましろさんの「輝き」という言葉が使われていましたが、この「輝き」はすなわち、「こだわりのなさ」、それゆえの、様々な次善へのオッケー感、おおらかな受容の態度、それゆえに万物万象(笑)を照らす感じだと思います。「こだわり」組は、こういう人に癒されるんだよな〜。
●次善の試行錯誤はいづれ「本質」に辿り着く
そして、理想一点張りじゃなくて、様々な次善オッケー感があるからこそ、いろいろな次善を現実で試すことに前向きになることができ(いろいろなタイヤキを試すシーンね)、結果、「全部おいしい」、それどころか、そもそもヤーキターイという物理的な何かを願っていたというか、子供の頃に家族と一緒に食べた楽しい雰囲気こそを自分は求めていたんだ、とツバサくんに「本質」を気づかせる流れになります。
前回までのキュアウィング登場エピソードで描かれていた、「飛ぶ」が理想だと思って一点張りで苦行のごとく頑張ってたけど、「本質」的に求めていたのは、かつて父が見せてくれたような、子供を守るために踏み出せる勇気と、その勇気が引き起こす奇跡への憧れだった……と、ツバサくんの心理のステップアップとキュアウィング変身の流れがリンクする物語過程と同じです。
次善を受容して試行錯誤しているうちに、どこかのタイミングで、当初理想だと思ってたかたちとは違っても、「本質」に一致する時がくる。だから、理想どおりじゃなくて次善めいていても、そのフェーズで試行錯誤してできることをやりながら毎日を生きていこう。がんばろう、社会人プリキュア視聴者、みたいな。
今回はましろさんエピソードでもあり、ソラとツバサを「輝き」で照らす側のましろ自体が、当初理想として「ソラやツバサのように一点張りした夢いいな」と思っていたのが、次善の自分なりに、自分的なナチュラルさでタイヤキ全部試すよ! とかやってたら、上述のような、ソラとツバサが「輝き」と呼ぶましろさんの「本質」に近づいた……という構造になっています。
この流れを強調してるってことは、次回はあげはさんエピソード開始っぽいですが、あげはさんも当初の理想として思い描いた保育士には、そのままはならない感じなのかもしれないですね。若干、既にあげはさんの保育士道も、「苦行」めいてる感じもありますしね。
ソラ、ましろ(ちょっと特殊な「輝き」の立ち位置)、ツバサ、あげは、みんな当初の理想の自分にはなれなかったけれど、次善の日々なりに試行錯誤して己の本懐を生き、やがて「本質」に辿り着けるのかも的な四人です。
ただ、いつかたどり着けるまでは苦しい時もあるから、四人で助け合いながらね、という。
現代の世界では人類みんなそんな感じなので(え)、現実を次善的に生きる日々の中で、助け合いながら、できるだけ陽気に生きていきたいものだなと思ったりした、第10話を視聴した感想だったのでした〜。
というわけで!
先週の日曜日(2日)の、YouTube Liveでの「ひろプリと神話の話をするライブ配信」にお越し頂いた皆さま、本当にありがとうございました。
先週配信の分は、アーカイブが残ってるので、タイミングが合った時によかったらどうぞです。
まだ慣れない感じでやっておりますが、神話学、心理学、脳科学、言語学あたりは関係し合ってるとの前提のもと、脳科学とプリキュアみたいなニッチな(笑)話などしておりました〜。
↓
●『ひろがるスカイ!プリキュア』第9話の感想と神話のお話【お話中心お絵描き配信】/YouTube Live(アーカイブ)
配信中に描いた図はこちら↓
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毎週日曜日の22:30〜23:10分に、その日の朝放映分の『ひろプリ』の感想をネタバレでお話しつつ、神話の話も絡めていく! というYouTube Live配信を定期的にやっております。(ラスト10分は予備時間で、実質30分配信です)
本日(4月9日:日)も配信URLは時間(22時30分)になったらTwitterに投稿しますので、試聴のタイミングはTwitterの方をチェックしておいて頂けたらと思います。文章だけじゃなく、話してる相羽さんに興味があるゾという方もお気軽にどうぞ。本日夜にお会いしましょう!
・Twitterもやっておりますので、フォローしてやって頂けたら喜びます〜。↓
『ひろがるスカイ!プリキュア』第1話の感想〜大人になったら末法の世になってたが、子供の頃のマクシム(自分との約束)を胸に虚構のヒーローが現実でもう一度立ち上がる - 少女創作ファンブログ―The Girlls Fiction Fan Blog(GFFB) https://t.co/XbNf8vYMQr …ブログ更新です。 #ひろプリ #precure
— 寂しいシロクマ(相羽裕司)/仙台市太白区 (@sabishirokuma) February 5, 2023
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→前回:『ひろがるスカイ!プリキュア』第9話の感想〜エゴを手放すことに自棄がかぶりそうになったツバサにエルちゃんが「待った」をかけてくれる話
→次回:『ひろがるスカイ!プリキュア』第11話の感想〜らそ山という擬似「迷宮」で聖あげはさんは「アリアドネの糸」を探している説へ
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