『ひろがるスカイ!プリキュア(公式サイト@東映/公式サイト@朝日放送)』第11話「気まずい二人!?ツバサとあげは」の感想です。
ネタバレ注意です。
●欠けてる人が「山=異界」での冒険を通して何かを持ち帰ってくる話
最近はプリキュアと神話の話をするYouTube配信とかもやってるわけですが、今話はいつにもまして神話感があるエピソードでありました。
現状での、『ひろプリ』神話力高めエピソードナンバー1かもしれないです。
まず、第一に今回は第3話(感想)に続いて「山」に行くお話です。
「山」。もうモーゼとかプロメテウスとか、神話上の英雄はとにかく「山」に行きますよね(笑)。
これは、現状では何かが欠けている英雄が、山(異界)での冒険を経由して、欠けてる本人・あるいは共同体に必要な「何か」を持ち帰ってくる……その儀式(イニシエーション)を経ることで本人・あるいは共同体はより調和に至る……というのが普遍的な神話の基底構造(アーキタイプ)であるからです。
(この辺りの話は、僕はよく引き合いに出す神話学者のジョーゼフ・キャンベルの本を参考にしています。)
今回のエピソードの「らそ山クエスト」とか、もうもう、神話上の「山の試練」を、現代作品、プリキュア作品に落とし込んだものじゃないですか。
では、今回は「山の試練」を経由して、誰が何を持ち帰ったのか?
分かりやすい方は、ツバサくんです。
もう、めっちゃ謎解きして。アスレチックして、「山の試練」受けまくってましたよね(笑)。
そういった「山の試練」の儀式(イニシエーション)を経て、彼は明らかに「聖あげはさんからの信頼」という宝物を持ち帰っています。
で、それは僕的に「表」エピソードっていう印象で。
おそらく、より深層の方はこれ、聖あげはさんの方もおそらく何かが欠けていて、今回の「山の試練」を通して何かを持ち帰ってる……っていうエピソードっぽいのですよね。
最後の、あげはさんのツバサくんを眺めながらの表情は意味深です。しかも、そもそも何であげはさんはこの日朝から「山」に行こうと、ソラ、ましろ、ツバサを誘いに来たのか? この辺りが明示されていないのが、逆に聖あげはという人物に関して、考察・解釈のし甲斐があるエピソードになっていると思います。
以下、僕なりの仮説を書きます。
●聖あげはは「迷宮」から抜け出す「アリアドネの糸」を探している?
直接的には今回は「山」なのですが、もうちょっと抽象度を上げると「異界」ということになり、今回はかなり神話における「迷宮(これも異界)」のお話に近い気がしております。
英雄が迷宮に入って、何かを持ち帰ってくる……タイプの物語ですね。
らそ山、道が2ルートあるとか、上から見ないと虹になってるのは気づかないとか、「迷宮」的ギミックがありありでしたよね。
基礎知識として有名な「迷宮」の神話を上げると、ギリシャ神話のミノタウロスの迷宮がまずは有名です。
ざっくりとは、迷宮の奥のミノタウロスに食べさせる人間として、テセウスが連れられてくる。ミノス王の娘のアリアドネはテセウスに惚れて、テセウスに糸玉を渡す。テセウスは糸を解きながら迷宮に入っていって、糸を辿ることで無事迷宮から帰ってくることができる……といういわゆる『アリアドネの糸』の神話です。
この神話の示している事柄はものすごく深いのですが、ざっくりとは「迷宮」とは人生の苦難とかのメタファーであり、「アリアドネの糸」は「何気ないもの」であるという点です。先人の英雄の(アリアドネの糸はダイダロス経由)「何気ないもの」に気づき、素朴に使えば、「迷宮」は抜け出すことができる。
この話の流れを今回のエピソードに当てはめた解釈を書いてみると、まず、聖あげはさんは、20th作品的に、「子供の頃にプリキュアシリーズを観ていて理想のヒーローを思い描いていたが、現在社会人になってみたら様々な苦難に直面している年齢くらいの人」の象徴である。
つまり、あげはさんも現在「迷宮」に迷い込んでいる人で、このままだとミノタウロスに象徴されるような巨大な怪物的なものに食べられてしまう。
そこで、今話では「らそ山」という擬似「迷宮」での冒険を通して、彼女にとっての「アリアドネの糸」を探っている。
で、「アリアドネの糸」は「何気ないもの」なので、これ、素朴な「信頼」なのではないかと。
今回、あげはさんがとにかくコノテーション(含意)だけでツバサくんとコミュニケーションをしようとするのですが、これは昨今どちらかというと「ちゃんと言葉にして言おう」が主流の中、異質に映ります。これ、あげはさん「何か」を信じたくて試していたんじゃないかと。
結果としては、コノテーションが功を奏して、ランボーグとカバトンには伝わらず、ツバサくんにだけ伝わって、ジャンケン脱出作戦は成功します。ここで描かれていたのは、ツバサくんへの「信頼」であろうと。
加えて、あげはさんは幼少時の原体験として、大人の都合でましろと離れ離れになった。大人世界での「信頼」というものに懐疑を持っていて、だからこそ自分自身が理想の最強の保育士になって、子供の頃の自分を投影した現代の子供たちの子供時代の「信頼」に基づいたつながりを守ろうとしている……というキャラクターに現時点では見えます。
以上を総合すると、あげはさんは社会人になる過程で再び現実で「信頼」に自信が持てなくなるようなことを体験しており、今回、ソラ、ましろ、ツバサという「子供時代の信頼の原点」に会いにきた。
その上で「山=異界=迷宮」での冒険を通して、自分にとっての素朴な「アリアドネの糸」であるツバサくんとの「信頼」の手がかりを経て、今回下山して現実の共同体に帰還している……という説を考えてみたいと思います。
「迷宮」の突破方法が今話時点では「プリキュアになる!」ではなかったのは注目したいところです。いずれキュアバタフライになるのだと思いますけど、その前にプリキュア変身という超解決ではなく、「素朴な信頼」みたいな、「何気ないもの」、「アリアドネの糸」的なものこそが「迷宮」を抜ける手がかりだというのを強調するエピソードを持ってきています。
なんか、20th作品ですし前向きな意味での「プリキュアの否定」要素は入り始めてるような気もするのですよね。物語後半で、「プリキュアで突破」というよりは「何気ないアリアドネの糸をたぐって迷宮を突破」的な展開がきたりしたら、それはそれで熱いと思うのでした〜。
というわけで!
先週の日曜日(9日)の、YouTube Liveでの「ひろプリと神話の話をするライブ配信」にお越し頂いた皆さま、本当にありがとうございました。
先週配信の分は、アーカイブが残ってるので、タイミングが合った時によかったらどうぞです。
まだ慣れない感じでやっておりますが、神話学、心理学、脳科学、言語学あたりは関係し合ってるとの前提のもと、脳科学とプリキュアみたいなニッチな話などしておりました。オキシトシンとプリキュアの話とかをしてるのは世界でここだけ(笑)な気も〜。
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●『ひろがるスカイ!プリキュア』第10話の感想と神話のお話【お話中心お絵描き配信】/YouTube Live(アーカイブ)
配信中に描いた図はこちら↓
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毎週日曜日の22:30〜23:10分に、その日の朝放映分の『ひろプリ』の感想をネタバレでお話しつつ、神話の話も絡めていく! というYouTube Live配信を定期的にやっております。(ラスト10分は予備時間で、実質30分配信です)
本日(4月16日:日)も配信URLは時間(22時30分)になったらTwitterに投稿しますので、試聴のタイミングはTwitterの方をチェックしておいて頂けたらと思います。文章だけじゃなく、話してる相羽さんに興味があるゾという方もお気軽にどうぞ。本日夜にお会いしましょう!
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『ひろがるスカイ!プリキュア』第1話の感想〜大人になったら末法の世になってたが、子供の頃のマクシム(自分との約束)を胸に虚構のヒーローが現実でもう一度立ち上がる - 少女創作ファンブログ―The Girlls Fiction Fan Blog(GFFB) https://t.co/XbNf8vYMQr …ブログ更新です。 #ひろプリ #precure
— 寂しいシロクマ(相羽裕司)/仙台市太白区 (@sabishirokuma) February 5, 2023
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→前回:『ひろがるスカイ!プリキュア』第10話の感想〜当初理想として求めていたもの(ヤーキターイ)と違っても現実で次善の道を試行錯誤しているうちに本質の輝きと一致したりもするお話
→次回:『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第12話の感想〜カバトンとソラの最初の「死と再生」、ブラック人生から遊びもあるヒーロー道へ
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