相羽です。

 『ひろがるスカイ!プリキュア(公式サイト@東映公式サイト@朝日放送)』第13話「届けて!はじめてのおくりもの」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

●「母的なるもの」との別れという、次の冒険への「召命」

 先週のYouTube Live配信(こちら)でもお話ししましたが、神話学的には、物語のはじまりには英雄(主人公)に冒険の始まりを告げる「召命」という事象が発生します。

 何か、運命のようなものに招かれて旅が始まるイメージですね。その「召命」に応じて英雄は旅に出て、冒険の末に、自分自身ないし自分が所属していた当初の「共同体」に欠けていた「何か」を持ち帰って帰還し、本人ないし「共同体」はより調和した状態に至る……これが神話的な物語の基底構造(アーキタイプ)です。

 『ひろがるスカイ!プリキュア』は、何かひねった変化球というよりは、神話的で普遍的な基底構造(アーキタイプ)を念頭においた物語作りをしている……というのは、『ひろプリ』は神話っぽい! と言い出してYouTube Live配信まではじめた僕が、ここ最近言っていることだったりです。

 その神話的な冒険の始まりである「召命」。

 『ひろがるスカイ!プリキュア』全体の物語としては、ソラ・ハレワタールさんという主人公が、子どもの頃に迷い込んだ「行ってはならないと言われていた森」で「憧れのヒーロー」さんに助けられた! という時に「召命」が起こっているのですが。

 今回の第13話は、もうちょっとミニマムな一区切りの物語の「召命」、つまり次回からの第2クールの物語の冒険への「召命」という感じのエピソードでしたね。

 どのような「召命」だったかというと、母的なるものとの別れ、という「召命」です。

 ソラがスカイランドに帰れば、ソラとましろはお別れすることになる。

 以前の感想でソラとましろは何らかの意味で「半身」同士ということを書きましたが、ここでは、まずはソラにとってはましろが、ましろにとってはソラが「母的なるもの」です。

 それとお別れして、冒険、ここでは母的なるものとお別れして自立して生きていくといった事象のシンボルとなるわけですが、それに向かっていかなくてはならない。

 人間誰しも母のお腹から生まれてきて、やがてそこから別々の個体に別れ、自立して生を歩んでいく、そういう普遍的な事象が神話に込められているから、「母的なるもの」からの別れという「召命」から自分の足で歩み出す冒険を語る神話が多いのだ(ざっくりとですが)、というのは、僕がよく引き合いに出す神話学者のジョーゼフ・キャンベルの本なんかにも書いてある話です。

 「召命」には何らかのキーアイテムが描かれることが多いのですが、今話ではそれは「靴」でしたね。シンボルとしても、赤ちゃんが「母的なるもの」から別れて歩み出す……というシンボルに合致したキーアイテムだったと思います。

 やや解説めいたことを書いておくと、「召命」には、「召命」拒否のパターンの神話もあって、さらにいったん「召命」拒否的なことをするのだけど、その後に真・「召命」みたいなものに招かれてより本質的な冒険に出る……パターンなどがあります。

 今回の第13話は、後者っぽいエピソードですね。

 まずは、「母的なるもの」との別れという「召命」を、笑顔でお別れするというかたちで、当初のソラ、ましろ、ゲストのおばちゃんは、「涙」を忌避しようとします。これは、一種の本質的な「召命」の拒否です。

 それに対して、あげはは幼少時のましろとの涙の別れの経験から、「涙」や「悲しみ」を伴わない「別れ」の「召命」にはやや否定的な見解を持っていて、ソラとましろは二人に訪れた「母的なるもの」との別れという試練(召命)に対して、もうちょっと踏み込んだ方がいいという立場で、二人の関係を促します。

 その、「召命」拒否にいきかけたソラとましろが、おばちゃんと息子さん夫婦&お孫さん(このラインも、「母」と「子」のお別れラインのお話になっている)の悲しみを伴う別れという本質的な「冒険」への誘いを、自らが後押しするというかたちで擬似経験し、ソラとましろも、「涙」「悲しみ」「痛み」を伴う、真なる「召命」に向き合い始める……というのが今回の第13話かと思います。

 そのような笑顔だけではいられない、真・「召命」に誘われて、ソラとましろが冒険に出る、第2クールの物語はスカイランド編。既に、ソラの「憧れのヒーロー」さんとの再会、という、いわば「呪い」との再会が次回予告で示唆されていて、テンションが上がります。

 ソラさんの「憧れのヒーロー」さんから受けた強い「呪い」は、第1クールで主にましろさんとの出会いと関係の進展の物語を経て解呪に向かっていたのですが、ここで改めて「呪い」と向き合うかたちになっていきそうです。

 ちなみに、神話的には、「母的なるもの」との「別れ」を、「自立」の儀式(イニシエーション)であると描きつつも、最後には、「自立」した上でまた「母的なるもの」と再会する…… というのも、また神話の基底構造(アーキタイプ)だったりします。

 それは、未熟だった頃の母にべったり的な方向のものとはまた違って、世界に、自然に、日常の何気ないものに、「母的なるもの」は宿っていたんだ、と気づく……みたいなかたちで再会するというかたちで(神話的には)描かれたりするのですが。

 今話の、「涙」「悲しみ」「痛み」といった「別れ」の「召命」を受け取りながらも、ソラとましろは手を繋いでいる……というシーンは、「冒険」の果ての、より普遍的なお互いの「母的なるもの」との再会も示唆してるような印象も受けます。

 意外と、親元を離れて東京で独身社会人をやってるかつてのプリキュアシリーズ視聴者とかに、やはり刺さるシリーズなのかな〜など思ったりしながら試聴している、『ひろがるスカイ!プリキュア』という作品なのでした〜。

 というわけで!

 先週の日曜日(23日)の、YouTube Liveでの「ひろプリと神話の話をするライブ配信」にお越し頂いた皆さま、本当にありがとうございました。

 先週配信の分は、アーカイブが残ってるので、タイミングが合った時によかったらどうぞです。

 まだ慣れない感じでやっておりますが、ソラとカバトンは対照されつつ共通点も多く鏡合わせの関係。文脈(競争主義)のため自分の本来性と離れて「強さ」を求めざるを得なかったカバトンと現時点の欠けた「ヒーロー」であるソラの関係は? といった話や、

 東洋の物語で有名な「召命(旅の始まり)」である「四門出遊」にふれながら、旅立つ前のお釈迦様が出会った「老病死僧」のうち「僧」がソラ・ハレワタールさんにおける「憧れのヒーロー」にあたる? といった話や、

 ソラ・ハレワタールとカバトンの「召命」と冒険というフィクションの話から、新社会人くらいの視聴者さん向けにリアルの僕の経験としての「召命」と冒険的な事柄の話、人生けっこう何とかなる……といった話をしました〜。

 気になる方は、タイミングが合った時に再生してみて頂けましたらと〜。

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『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第12話の感想と神話のお話〜カバトンの「死と再生」とソラ・ハレワタールの「召命」/YouTube Live(アーカイブ)


 配信中に描いた図はこちら↓

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『プリキュアの感想と神話のお話』/YouTubeチャンネル


 毎週日曜日の20:00〜20:40分(時間が変わったので注意!)に、その日の朝放映分の『ひろプリ』の感想をネタバレでお話しつつ、神話の話も絡めていく! というYouTube Live配信を定期的にやっております。(ラスト10分は予備時間で、実質30分配信です)

 本日(4月30日:日)も配信URLは時間(20時00分)になったらTwitterに投稿しますので、試聴のタイミングはTwitterの方をチェックしておいて頂けたらと思います。文章だけじゃなく、話してる相羽さんに興味があるゾという方もお気軽にどうぞ。本日夜にお会いしましょう!

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→前回:『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第12話の感想〜カバトンとソラの最初の「死と再生」、ブラック人生から遊びもあるヒーロー道へ
→次回:『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第14話の感想〜ベリィベリーという「境界の守護者」と向き合い「正しいとは何なのか」を求めるソラ・ハレワタールの次の冒険がはじまるへ
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