『ひろがるスカイ!プリキュア(公式サイト@東映/公式サイト@朝日放送)』第14話「スカイランドへ!憧れのあの人との再会」の感想です。
ネタバレ注意です。
●神話的にはベリィベリーは英雄(ソラ)の前に現れる「境界の守護者」
先週のYouTube Live配信(こちら)でもお話ししましたが、神話学的には、前回と今回は第2クールの新たな物語の始まり、「召命」のエピソードです。
第1クールのこれまでの安心の場所から「外」へと出て、英雄(神話的な意味での)ソラ・ハレワタールの新たな第2クールの冒険が始まる。
その文脈からすると、今回ソラの前に立ちはだかったベリィベリーは、神話的な意味での「境界の守護者」のポジションです。
もう、ほぼほぼ、安心な場所と、「外」の冒険に向かわなくてはならない危険な場所との「境界」に、(神話では)「守護者」的なのがいるのですね。それと(何らかの意味で)戦わなくてはならないのも、定番中の定番です。
細部は異なりますが、基底構造的にはアルカディアの牧神パン(境界で守られる集落のすぐ外に住んでいる)とか、ですね。
冒険に向かわなくてはならない危険な「外」の世界というのは、神話学的・心理学的には本人の広大な無意識世界の反映である、なんて言われますから、そことの「境界」に現れる「守護者」も何らかの意味で英雄本人の鏡であったりするのですね。
そういう意味で、一人でひたすら努力して、「弱いやつは認めない」ということを口にしてしまうベリィベリーさんは、ソラさんのイフというか、ソラさんの無意識下にあるであろう何らかのソラさんの側面の反映とも言えそうなのです。ソラさんも、友だちいなくて一人でヒーロー修行に打ち込んでいた頃、どこかで思っていたのかもしれない。「弱いやつは認めない」と。
そういう自分自身のダークサイドの(的なこともある)「守護者」を超えて、「境界」の「外」の冒険に向かって、「外」の広大な世界(これは、神話学的・心理学的には本人の無意識世界の反映と言われたりする)で、宇宙的な規模の(笑)真の力と出会って、それを英雄は自分自身と共同体に持ち帰ってくる……というのが神話の基底構造(アーキタイプ)なわけですが。
まあ、「外」の世界の冒険は一筋縄ではいかないわけです。
どうやら、第2クールのソラさんの「外」の世界の冒険は、「正しい」とは何なのか? に向き合う時がきた、という物語であるようです。
ベリィベリーは、表層的には一旦戦う方面での意味での「境界の守護者」として今回ソラの前に立ち現れていますが、より深層的には、いよいよこの「正しい」とは何なのか? の命題の冒険にソラを誘う役割で登場してきております。
そんなことは考えないで、これまでの安心な場所にいれば楽であろうに、第2クールの冒険の「召命(旅のはじまりの合図)」はなされて、ソラはそれに応じてそういうことも考えてしまう危険な冒険、「外」の世界の精神の苦難を伴う大海へと「境界の守護者」ベリィベリーを超えて漕ぎ出して行ってしまう。そういうのが今話です。
「正しいとは何なのか。ヒーローはずっと考え続けなければならない」
●シャララ隊長はスカイランドの秘密を何か知ってるっぽい
「正しいとは何なのか」のメッセージをソラに伝える際に、なんか自身にも思うところがあるような表情をしているので、シャララ隊長はスカイランドのそうそう「正しい」とは言えない何かについて知ってるっぽい気がします。
ソラさんが子どもの頃に迷い込んだ「行ってはならないと言われていた森」の存在、スカイジュエルがOPのアンダーグ帝国に通じてると思われる穴(?)にも描かれている、辺境では大火災が起こったりしていると、スカイランドに何か秘密があるのはほぼほぼ確定っぽいと思っています。
YouTube Live配信の方ではお話ししておりましたが、日本神話の「冥界下り」モチーフ説はありそうな気がしてたりですね。
スカイランドが(日本神話の)高天原相当で、アンダーグ帝国が冥界相当だとすると、イザナミに相当する何者かがヒノカグツチ相当の何かを生んだのをきっかけに、高天原(スカイランド)から冥界(アンダーグ帝国)に降りている、みたいなのはありそうだと思っています。
アンダーグ帝国が使う力が雷(カバトンを始末しようとした時)、スカイランドの力の系統も雷(今回ベリィベリーが使ってるものなど)、辺境で起こった大火災、なんか、ヒノカグツチ(ざっくりとは火と雷が関係がある)相当のものにまつわる何かがある気がします。
よって、配信で以前から言ってる、エルちゃん=ライトニング(雷)ちゃん説は継続してみたいと思います。
今回ベリィベリーが言っていた「弱いやつに居場所はない」も、カバトンが言ってたことと同じで、何かとスカイランドとアンダーグ帝国は鏡合わせ的だ、というのが描かれてると思うのですよね……。
●世界を壊すルートと、冒険に出て世界に欠けてるものを持ち帰るルート
かくして、ソラの「正しいとは何なのか」の第2クールの新たなる冒険がはじまったタイミングで、新敵幹部バッタモンダーさんが登場。
いわく、「もう頑張らなくてイイんだよ。キミを傷つけるこんなセカイ、ボクが壊してあげるから」。
「セカイ系」きたー! という感じですが、これは「正しいとは何なのか」の第2クールの新たなる冒険の「召命」を拒否せよ、という甘い誘惑です。
そんな、難しいこと考えて、冒険に出て世界に欠けてるものを持ち帰るとかやらなくてイイから、自分が傷ついたなら、世界なんて壊してしまえばイイ。
そういう危険な志向性です。
世界を壊すなんて許しません! ですめばよいのですが、上述したように、「冥界下り」的というか、「アンダーグ帝国」が「スカイランド」から追放されたものが建国したもの的な話とかにも今後なってくる射程があるとすると、「正しいとは何なのか」の第2クールの冒険はかなり大変なわけです。
おそらく、今回から描かれている軍服ソラは、ソラさん迷走中の記号で、第2クールは迷走期なのかなぁ(作劇的に、解放が描かれるのは第3クールとか終盤なので)とも。
憧れのシャララ隊長と同じ軍服を着るがゴールではないと思われるので、ここから軍人ヒーローとは違う、「プリキュア」っていうヒーローを描き出す方向に向かっていくのだと思います。
第2クールは、まさに「迷宮」で迷ってる段階かもしれないので、長期視聴のスタンスでのぞみたいと思うのでありました。「アリアドネの糸」を見つけてから、ソラさんが「迷宮」を抜ける第3クール以降がめちゃめちゃ盛り上がりそうな気がしているのでありました〜。
というわけで!
先週の日曜日(4月30日)の、YouTube Liveでの「ひろプリと神話の話をするライブ配信」にお越し頂いた皆さま、本当にありがとうございました。
先週配信の分は、アーカイブが残ってるので、タイミングが合った時によかったらどうぞです。
まだ慣れない感じでやっておりますが、神話の話やコンフォートゾーンの話を行き来しながら、『ひろプリ』劇中のラーニングゾーンとしてのスカイランドや新たな人間関係、劇外での学習領域的に展開されていくのかも的な『ぼくプリ』……といった話をしたり、
『ひろプリ』第2クールはソラさんとましろさんの「母的なるもの」との別れから始まり、そしてなんらかのかたちでの再会へと向かっていく物語なのではないだろうか……といった話をしたり、
第1クールの安心の人間関係から第2クールの新たな人間関係へ、「変化していきたい気持ち」と「このままでいたい気持ち」の葛藤が物語の動力となる……といった話をしました〜。
気になる方は、タイミングが合った時に再生してみて頂けましたらと〜。
↓
●『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第13話の感想と神話のお話〜母的なるものとの別れと再会というソラ・ハレワタールの次なる「召命」/YouTube Live(アーカイブ)
配信中に描いた図はこちら↓
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●『プリキュアの感想と神話のお話』/YouTubeチャンネル
毎週日曜日の20:00〜20:40分(時間が変わったので注意!)に、その日の朝放映分の『ひろプリ』の感想をネタバレでお話しつつ、神話の話も絡めていく! というYouTube Live配信を定期的にやっております。(ラスト10分は予備時間で、実質30分配信です)
本日(5月7日:日)も配信URLは時間(20時00分)になったらTwitterに投稿しますので、試聴のタイミングはTwitterの方をチェックしておいて頂けたらと思います。文章だけじゃなく、話してる相羽さんに興味があるゾという方もお気軽にどうぞ。本日夜にお会いしましょう!
・Twitterもやっておりますので、フォローしてやって頂けたら喜びます〜。↓
『ひろがるスカイ!プリキュア』第1話の感想〜大人になったら末法の世になってたが、子供の頃のマクシム(自分との約束)を胸に虚構のヒーローが現実でもう一度立ち上がる - 少女創作ファンブログ―The Girlls Fiction Fan Blog(GFFB) https://t.co/XbNf8vYMQr …ブログ更新です。 #ひろプリ #precure
— 寂しいシロクマ(相羽裕司)/仙台市太白区 (@sabishirokuma) February 5, 2023
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→前回:『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第13話の感想〜母的なるものとの別れという第2クールの新たなる冒険への「召命」へ
→次回:『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第15話の感想〜母的なるもの・シャララ隊長と別れてソラ・ハレワタールの次なる冒険が始まってゆくへ
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