『ひろがるスカイ!プリキュア(公式サイト@東映/公式サイト@朝日放送)』第16話「えるたろう一座のおに退治」の感想です。
ネタバレ注意です。
●劇中劇表現をとおした心理の深掘りと、成人プリキュア聖あげは/キュアバタフライ物語の初動と
今回は劇中劇回です。
劇中劇表現は、その表現形式自体に意味がありまして。
ざっくりとは、百合の名作である(え)『マリア様がみてる』や『やがて君になる』とかで、劇中劇の「演劇」シーンが(けっこう物語全体でも重要なところで)入るのと、同じ意味合いです。
『ひろプリ』の今回の題材は(『マリみて』とかと違って形態は「人形劇」ですが)、『桃太郎』。
劇中劇の制作自体に、作中キャラクターたちが携わるのも、『マリア様がみてる』とかと同じパターンです。
この劇中劇表現、ざっくりとは。
作中のキャラクターたち(ソラ、ましろ、ツバサら)が、作中という虚構の中で更なる劇という虚構を演じる(ソラ犬、ましろ猿、ツバサ雉など)中で、虚構の中の虚構(今回でいえば『えるたろう』)に影響を受けて、虚構(『ひろプリ』)のキャラクターの心理が変化する。
さらに、その心理が変化したキャラクターたちが紡ぐ虚構(『ひろプリ』)を観ている、私たち現実の視聴者の心理も変化する……という多層構造になっているのが特徴です。
(ちなみに、その虚構から受けた現実の視聴者の私たちの心理変化を、さらに虚構である劇中にフィードバックする……というギミックが、プリキュアシリーズの映画の「ミラクルライト」システムだったりします)
多層構造の中で、心理の流れがダイナミックに虚構と現実を行き来するので、より「心」というものの深奥に迫れる……というのが、この劇中劇表現という形式です。
別な側面からの例だと、現実では色々な制約から自分の心を抑圧してるんだけど、オンラインゲームという虚構の中だと自分の心の奥を解放できて、むしろ虚構の中で感じ・表現した心理の方が、自分の本来性の心理である、みたいなことはあります。
その流れで、虚構である劇中劇の中での演技の中で、逆説的に自分の百合感情の本来の側面に気づく……みたいなのが、『マリア様がみてる」パターンの劇中劇表現パターンです。
今回の『ひろプリ』第16話も、多層構造なのでけっこう複雑です。
ソラ、ましろ、ツバサ(とあげは)が、劇中劇『えるたろう』を演じる中で、むしろ「励まされる」方に心理が変化する。その心理変化を現実(と言っても『ひろプリ』という虚構内ですが)に持ち帰る……というところまでは、上記の流れでけっこう分かりやすいです。
ただ、二点、『えるたろう』にはシンボル表現もかかっているので、やはり複雑です。
一点目は、『えるたろう』内の鬼ヶ島や「鬼」が、「アンダーグ帝国」のシンボルになっているようであること。
つまり、「鬼」の象徴を読み解くことができれば、「アンダーグ帝国」の真実に迫ることができそうなのですが。
僕も最近は「神話」の配信とかやっておきながら、『桃太郎』はそこまで詳しくないので、今回「鬼」という存在でどういうシンボルを見せようとしているのかまでは迫れず。
ただ、『桃太郎』の「鬼」をどう解釈するかは、そもそも現実の研究とかでも諸説あるので、今回の『ひろプリ』でどういう説を採用しているかが分からないので、なかなか解読は困難、という状況だったりもします。
二点目は、劇中劇=虚構、つまり、20Th作品の文脈的に、『えるたろう』という劇中劇=視聴者たちが昔観ていたプリキュアシリーズという虚構……というシンボルにもなっているようだという点も押さえておきたい感じです。
今回、ソラさんが、ソラ犬へと自己投影(という表現にしてしまいますが)していたように、昔子どもだった視聴者たちも、キュアドリームとかに自己投影していたはず。そして鬼退治してめでたしめでたし的な、夢原のぞみたちは仲間と力を合わせて勝利しました、的なハッピーエンドを夢見ていたはず。
しかし、今回の第16話では、劇中劇『えるたろう』は中断して、ソラ、ましろ、ツバサたちは、現実の「力こそが全て」を掲げるバッタモンダーとの戦いにおもむくことになります。
この流れに、劇中劇(プリキュアシリーズ)を通して、現実の自分の心も変化した。どこかで、プリキュア視聴時間は中断して、現実の戦いにおもむかなくてはならない……というような方向のメッセージのようなものを読み取るのは、そんなにも突飛な話ではないかと思います。
そして、ラストは、現実(と言っても『ひろプリ』という虚構内ですが)の方で、『えるたろう』の行進を楽しそうにやってみる……というラスト。
かたちは変わっても、どこかで中断してしまった子どもの頃に観ていた『プリキュア(虚構)』的なるものの続きを、大人になって現実を生きていく中で、表現するように生きていくことはできるかもしれない……というラストに思えます。
つまり、大人夢原のぞみさんが登場する『オトナプリキュア』の放映も近づいてきて、いよいよ、成人プリキュア・聖あげは・キュアバタフライ変身のエピソードの初動に入ってきているのが、今回の第16話なのかな、と思いながら試聴していた日曜日の朝だったのでした〜。
というわけで!
先週の日曜日(5月14日)の、YouTube Liveでの「ひろプリと神話の話をするライブ配信」にお越し頂いた皆さま、本当にありがとうございました。
先週配信の分は、アーカイブが残ってるので、タイミングが合った時によかったらどうぞです。
まだ慣れない感じでやっておりますが、ソラがソラシド市へ移動するというシチェーションで、1話が自己犠牲的な孤立渡航、15話は世界の信頼に基づいた渡航、という1クールを経ての対比の話&シャララ隊長喪失からの避難所としての役割のソラシド市……といった話をしたり、
境界を超えて冒険に出て、迷宮的な場所から自分と共同体に欠けてたものを持ち帰る……という物語の型について、ギリシャ神話、ひろプリ11話、ひろプリのこれからを並列してみるお話などをしました〜。
気になる方は、タイミングが合った時に再生してみて頂けましたらと〜。
↓
●『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第15話の感想と神話のお話〜再びソラシド市へ〜ソラ・ハレワタールの1話の自己犠牲の孤立渡航と、15話の世界への信頼に基づいた渡航と/YouTube Live(アーカイブ)
配信中に描いた図はこちら↓
YouTubeチャンネルへのチャンネル登録もぜひよろしくです。ほぼほぼ徒手空拳で配信の世界に飛び込んでみたカタチですが、まずはチャンネル登録者30人を目指して努力していく所存です!↓
●『プリキュアの感想と神話のお話』/YouTubeチャンネル
毎週日曜日の20:00〜20:40分(時間が変わったので注意!)に、その日の朝放映分の『ひろプリ』の感想をネタバレでお話しつつ、神話の話も絡めていく! というYouTube Live配信を定期的にやっております。(ラスト10分は予備時間で、実質30分配信です)
本日(5月21日:日)も配信URLは時間(20時00分)になったらTwitterに投稿しますので、試聴のタイミングはTwitterの方をチェックしておいて頂けたらと思います。文章だけじゃなく、話してる相羽さんに興味があるゾという方もお気軽にどうぞ。本日夜にお会いしましょう!
・Twitterもやっておりますので、フォローしてやって頂けたら喜びます〜。↓
『ひろがるスカイ!プリキュア』第1話の感想〜大人になったら末法の世になってたが、子供の頃のマクシム(自分との約束)を胸に虚構のヒーローが現実でもう一度立ち上がる - 少女創作ファンブログ―The Girlls Fiction Fan Blog(GFFB) https://t.co/XbNf8vYMQr …ブログ更新です。 #ひろプリ #precure
— 寂しいシロクマ(相羽裕司)/仙台市太白区 (@sabishirokuma) February 5, 2023
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→スカイミラージュ
→前回:『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第15話の感想〜母的なるもの・シャララ隊長と別れてソラ・ハレワタールの次なる冒険が始まってゆくへ
→次回:『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第17話の感想〜虹ヶ丘ましろさんというキャラの「こだわり」の志向性と「こだわり」のなさという志向性と
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