相羽です。

 『ひろがるスカイ!プリキュア(公式サイト@東映公式サイト@朝日放送)』第20話「ましろの夢 最初の一歩」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

●ましろさん、クリエイターはいいかもしれない

 けっこう序盤から描かれている、ましろさんには、ソラさんにおける「ヒーロー」、ツバサ君における「飛ぶ」、あげはさんにおける「最強の保育士」のような、将来を志向した「こだわり」がない……というお話。

 うちのブログの感想では、


1. これからましろさんも何か「こだわり」を見つけて追求していくという物語の方向性

2. ましろさんは特定の「こだわり」を持つようにはならず、いわば全てであって全てでもない、でもネガティブなニュアンスではなく、融通無碍(ゆうずうむげ)というか千変万化(せんぺんばんか)というか、そういう「境地」を体現する独特の存在として描かれていく……という方向性


 の2パターンの今後の「ましろさん物語」の展開を推定していたりしました。

 僕、個人の感覚では「2」に行った方が面白いかなと思ってたのですが(笑)、今話のエピソードは、やっぱり「1」なのかな? と思わせる方向のお話でありました。

 その、ましろさんの「こだわり」になるからもしれない題材は、「絵本(づくり)」。

 うーむ! 悔しいけど(え)、ましろさんとクリエイター(系)は相性がイイかもな〜。

 「何にもなれない(選べない)」と「どんな世界(物語)でも描ける」クリエイターは、実は相性がイイです。この人生で一つの職業に全部ベットとかはできないけど、その分いくつもの職業の物語を、世界を描きます! 的な方向です。

 加えて、

 作品の基本アイテムである「ふしぎなミラージュペン」は、そのまま「ペン」で絵を描く道具なので、作品の初期からましろさんというキャラクターに「絵を描く」要素に徐々に目覚めていく設定が組み込まれていた可能性がわりとあります。

 さらにさらに、エンディング映像の、キュアスカイやキュアプリズムが色鉛筆で描かれたフィクションチックになる当初からあった演出。これは、メタに「絵を描く」人になったましろさんないし、ましろさん的な人(現実で『ひろプリ』を観てる視聴者的な人とかね)が、プリキュアたちを絵に描いている……という演出だったという解釈もできるようになってきてしまいました。

 うーむ、けっこう、「1」の方向で「絵を描く」「絵本(づくり)」が、一つのましろさんの「こだわり」を持って取り組めることになっていく……展開もだいぶ「アリ」になってきたかもしれないのでした〜。


●ましろさんの「楽しい」というフローの状態

 ましろさん、当初こそストーリーとかイメージとか思い浮かばない感じで、「絵本(づくり)」も自分には向かないんじゃ……みたいな感じだったのですが。

 エルちゃんの砂場の件でインスピレーションを受け取って(おそらくエルちゃんに伝えたい何か的なもの)からは、明確に「絵本(づくり)」に対して「楽しい」と言ってるんですよね。

 もう、没入で、いわば「フロー」の状態で、何か理屈でどうこうというより、「ただやる」という状態で、この状態に入ったクリエイターは強いです(笑)。

 カバトンさんとか、アンダーグ帝国とかの対比の動機だと思うんですよね。

 カバトンさんとかは、競争が厳しいらしいアンダーグ帝国で、頑張って頑張って強くなって、なんとか「自分の価値を証明しようとして」頑張っていたわけです。

 初期ソラさんもそれに近い(というか、カバトンさんとソラさんはかなり鏡合わせに描かれていました)。友達との交流とかは切り捨ててでも、頑張って頑張って、「ヒーロー」を目指す。どこか、あの日、森に入るという禁忌を犯してしまったのに助けられた「自分の価値を証明しようとして」頑張ってきた感じですよ。第1クールの物語を経て、ソラさんは現在はだいぶ柔らかくなってますが(ただ、後半おそらく「呪い」との再会イベントが予想される。)。

 それが、ましろさんは、「楽しい」からやる。なんか、やる。「ただやる」感じですからね。特に「自分の価値を証明しようとして」やっているわけじゃない。

 次項に続きますが、この姿勢がわりと「競争」の前提が強くて「自分の価値を証明しようとして」みんなが頑張らなければならない世界の解放の志向性を持っていたりもするのです。


●ましろさんの『ブランコ』の世界

 という感じで、ましろさんが作った絵本『ブランコ』。

 ざっくりとは、上述の「競争」の前提が強くて「自分の価値を証明しようとして」みんなが頑張らなければならない状態から解放された世界を描いているような作品です。

 そもそも、エルちゃんの砂場の件も、エルちゃんが玩具(シャベル)という「所有」するものに「エゴ」で「こだわり」を持ってキープするのか、という案件です。

 つまり、「エゴ」を貫いて「競争」を勝ち抜き「自分の価値を証明しようとして」頑張る、カバトンさん的、アンダーグ帝国的、初期ソラさん的世界の初動に関して、どう捉えるか、という話なのです。

 あのまま、エルちゃんが「エゴ」で自分の「所有」するものを守る! という「こだわり」 を強くしていくと、「エゴ」で「競争」を勝ち抜き、自分はこれを「所有」するに値する存在だと、「自分の価値を証明しようとして」頑張る方向の世界に入っていきます。

(カバトンさんも、「家」とか「所有」に固執してる描写がありましたね。カバトンさんにおける自分の価値証明の証としての「家」などが、今話のエルちゃんにおける「玩具」にシンボル的に対応しています。)

 ましろさんは、そっちの世界の方向性をブレイクするかもしれない可能性として「ブランコ」で、「エゴ」で、例えば私は鳥だ! 鳥は鳥として、鳥の取り分のこの「ブランコ」を占有(所有)するために、頑張って頑張って頑張る! という方向ではなく、特に誰がどうとか「こだわり」がなく「ブランコ」に乗ったり、周囲に集まったりして、なんか、鳥とか、蝶とか、色んな動物とかいたけど、虹が見えたね、ハッピーだね、という世界観を描き出しています。


 「自分の価値を証明しようとして」頑張って頑張って頑張らなくても、「こだわり」なくみんなで虹を見ることはできる。


 そんな世界があるはずだ。

 これが、ましろさんという人間の核心と思われるので、ましろさんにあった、「こだわり」がないという問題(っぽく見えていたもの)、逆説的にましろさんが最初に解消したようにも思えるんですよね。

 原型としてアートで表現できるくらい、むしろ、ソラさんとかよりも、ましろさんのましろさんたる志向性のようなものは、ちゃんとある人とも言えます。

 ちなみにましろさんが思い描いた「ブランコ」的な世界は、神話的には一種の「理想郷」で、世界各地の神話・宗教に似た系統のものがあります。ざっくりとは、原初、人間は「理想郷」的な場所にいたんだけど、色々あって、現在はそこと比べると仮想的な「世界」で生きている……タイプのお話です。

 有名なのだと、(専門家の方にはざっくりすぎると怒られるかもですが)キリスト教系の「エデンの園」とかもそういう方向性の位置付けです。

 で、これ、ましろさんが描いた「ブランコ」的理想郷は、『ひろプリ』世界でも原初に存在していて、ましろさんはそれを何らかの意味合いで観測してるんじゃないか、説を考えてみたりします。

 スカイランド、ソラシド市、アンダーグ帝国の他に、どうも「天球」という謎の世界のレイヤーの存在が匂わされている点、ヨヨさんが最初に口にしていた「運命」という言葉などが、そのような原初世界を想定すると、色々と繋がってくる気がしています。

 いずれにせよ、『魔法つかいプリキュア!(感想)』並みに、「世界」に関しては物語のコアと関わるギミックがあるのが『ひろプリ』という作品だと感じています。

 理想郷的な原初の「ブランコ」的な「天球」のレイヤーでは、ソラとましろは半身的な存在として暮らしていた……とかだと、本当「神話」チックで僕好みな物語なのですけどね〜。

 というわけで!

 先週の日曜日(6月11日)の、YouTube Liveでの「ひろプリと神話の話をするライブ配信」にお越し頂いた皆さま、本当にありがとうございました。

 先週配信の分は、アーカイブが残ってるので、タイミングが合った時によかったらどうぞです。

 あげはさんとツバサ君の関係。あげはさんからツバサ君へのベクトルは「君は君でオッケー」。「飛ぶ」理想が叶わない場合でも、飛べないプニバード族なりに生きていけばいいさというまなざしがある…といった話をしたり、

 ツバサ君とソラさんの「親的なるもの」との関係(シャララ隊長→ヒーロー/お父さん→飛ぶ)という物語。ツバサ君はあげはさんを経由して飛べないプニバード族の側面と和解していくルートもあるかも…といった話などをしました〜。

 気になる方は、タイミングが合った時に再生してみて頂けましたらと〜。

 ↓


『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第19話の感想と神話のお話〜聖あげはと夕凪ツバサの関係とソラ・ハレワタールの物語との連動/YouTube Live(アーカイブ)


 配信中に描いた図はこちら↓

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→前回:『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第19話の感想〜夕凪ツバサ君の未来に「飛ぶ」ルートに加えて「芸術家」ルートも出てきたお話へ
→次回:『ひろがるスカイ!プリキュア(ひろプリ)』第21話の感想〜プリキュアの力に変身する人間個人の人生のフレーバーがかけ合わさって新たな景色が見えてくるみたいなお話へ
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