相羽です。

『ひろがるスカイ!プリキュア』も終盤になってきたので、今回はコラムです。

『ひろプリ』のストーリーには色んな要素があるのですが、僕が注目していたのは、「無条件の状態の自分をゆるすということ」という話なのであろうな、という部分です。
 第1話でソラさんが語っている「ヒーロー」像、「泣いている子どもを絶対に見捨てない」。

 これは、ここまで話数が進むと、「泣いている子ども」=「他ならぬ子ども時代のソラさん」という構図なのだろうなということが分かってきます。

 ソラさんは子どもの時に禁忌の森に入っていった時に泣いていたということ。

 その後、シャララ隊長に助けられたという劇的な体験をきっかけに、強烈に「ヒーロー」の道を求道するのですが、その過程で同年代の友だちと遊んだりすることが希薄だったことが描写されており、全体的に「ソラさんの子ども時代」=「泣いている」とシンボル的には解釈できると思うのです。

 そういった「泣いている子ども」であったソラさんが自分自身に優しくしてあげるように、ましろさんとの出会いをきっかけに、子ども時代に普通だったらあるような「楽しい」ことをソラさんが体験していく(OPのメイクごっこで笑い合うソラさんとましろさんの絵が、そういう文脈もあり美しいのはとても印象に残っています)。ソラさんが少しずつ変わっていく……というのが『ひろプリ』の大まかなストーリーラインです。(第4話の頃はまだ「私なんか、放っておいてくれれば」と言っていたのが懐かしいですね……)

 それゆえにクリスマス回(スリクマス回?)・第46話の、ソラさんが眠っている子どもにプレゼントという無償の優しさを届けるシーンは、温かさが感じられるものでした(この回の眠っている子ども=子ども時代のソラさん自身……という表現にたぶんなっている。ここまでの物語を経て、ソラさんの子ども時代も癒えたのがうかがえる)。

 こういったソラさんのストーリーで描かれていたのは、大まかには「無条件の状態の自分をゆるすということ」「大事にするということ」だと思います。

 子どもの頃に禁忌の森に入ってしまったダメな自分は、シャララ隊長みたいな「ヒーロー」になるという「条件」を満たせれば、価値が証明できる。

 これが序盤のソラさんの行動原理と思われますが、やはりこういう「条件」付きで自分の価値を証明しなくてはならないというのは苦しいです。

 出世できたら価値があるとか、結婚できたら価値があるとか、●●という「条件」を満たせたら自分には価値があって、ようやく自分をゆるせる……と、こういう方向の「自分で自分を認めて大事にするには、『条件』を満たす必要がある」という考えは苦しくなってくるところがあります。

 そうではなくて、『ひろプリ』のストーリーを追っていて感じられてくることは、「無条件」であなたはあなたをゆるして、自分自身を大事にしてもいいんじゃない? みたいな優しい世界観です。

 第4話(感想)のソラさんの作品全体のキーセリフ、「ましろさんは、今のましろさんのままでイイんです」も、当初はましろさんの成長をはばんでしまうネガティブなセリフであった可能性も考えましたが、ストーリーがここまで進むと、わりとそのまま、「そのまま」、「無条件」の自分を大事にしようよという方向のメッセージの台詞だったのだろうと思われます。

 飛べないプニバード族のツバサくんが、当初は「飛ぶ」ことにこだわっていたけれど(「飛ぶ」という「条件」を満たせたら自分には価値があるという世界観)、最終的には飛べない自分の「そのまま」なりに、「賢者」方面の別の道でやっていくのもありなんだ……となっていく話も。

 あげはさんの、たぶん本当は両親の離婚に傷ついている面もあったのだけど(これも「泣いている子ども」要素)、「最強の保育士」という「条件」を達成して、イケてアゲてる自分の価値を出そう……というところからの、第36話の、自分の子どもの頃の「別れ」が意識されるたけるくんとの「別れ」で、素直に「そのまま」なりに涙を流せるようになる(悲しかった自分のままをゆるせる)……という話も。

 ましろさんの、ソラさんたちのように打ち込めるものがない自分に悩み、何か「条件」を達成して自分の価値を証明しなくてはならないんじゃ? という焦燥からの、最終的に、ましろさんは打ち込めるものがないましろさんのまま、ましろさんなりでいいという「落ち葉」の境地に達し、アンダーグ帝国の価値基準では価値を証明できなかったバッタモンダーさんも、ましろさんに照らされてバッタモンダーさん「そのまま」なりに大事な存在なんだ……と着地する話(第43話)といい。

 これらの話は、おおむね、無理に「条件」を達成することで自分の価値を証明しなきゃという焦燥にとらわれるのではなく、当初自分の欠点だと思っていたところも含めて、「無条件」、「そのまま」で自分は大事な存在なんだと、自分で自分に許可を出す。自分をゆるすという方向のお話だと思います。

 では、物語全体で、最後にまだ「自分で自分をゆるせていない」、「泣いている子ども」に相当するのは誰なのか? それが、カイゼリン・アンダーグだと思います。

 上記したように、『ひろプリ』はソラさん自身が「泣いてる子ども」だったという構図なので、ソラさん=(ニアイコール)カイゼリンの構図で、ソラさん自身、カイゼリン自身、「泣いている子ども」を救えるのか? というのが最後のお話です。

 ソラさんとカイゼリンは、子どもの頃に禁忌に立ち入り(それ自体は世界を広げようというベクトル)、心に負荷を受けるような原初体験をした、というのが共通しています。

 ソラさんは禁忌の森(これが、なんらかの世界の禁忌的なものに関係するのか、あと3話で明らかにされるのかは不明)に立ち入って、シャララ隊長に助けられるという体験をした。

 カイゼリンは、禁忌(「力が全て」という価値観に疑問を持って、戦い合うだけの世界の前提を疑った)に挑み、エルレインさんに父を殺される(真相はまだ不明だけど、カイゼリンさんは今はそう認識している)という体験をした。

 いずれも、心にダメージを負った「泣いている子ども」的な体験です。

 そこからのリカバリー(回復)の過程が、二人はルート分岐してる感じで、主には外の世界に自分の世界を広げていって、ましろさんに出会えたかどうかが重要なポイントという感じです。

『ひろプリ』でも大事な第5話(感想)ですが。

 ソラさんとましろさんが反目(ケンカ)の状態になり、ソラさんがこれまでの自分の世界(シャララ隊長的な、自己犠牲をはらんだ「ヒーロー」像)に閉じこもりかける、というお話です。しかし、この時はましろさんが追ってきてくれて、世界(ビルとビルの間が象徴表現として使われています)を飛び越えて二人で話して、ソラさんは新しい世界(脱・シャララ隊長への萌芽)へと開け始めます。

 一方、カイゼリンはエルレインと反目の状態になるのは同じですが、その後これまでの自分の世界(「力こそが全て」)に閉じこもって、その後エルレインと話すことはなかったようです。

 第47話のカイゼリンが閉じ込められている(ように見える)回復装置が、本当「閉じて」いる比喩表現という印象です。

 エルレインに父が殺されたと認識する事件の後、ゲートが開かなくなったのが(エルレインさんはこの点を憂いている)、カイゼリンの意志(いわゆる、自分の世界に閉じてしまって他者を拒絶的な話)なのか、残り3話で出てくるのかもしれない黒幕の仕業なのかは分かりませんが、とにかく、カイゼリンの方はかなり「閉じた」関係にみえるスキアヘッド以外そばにいなくて、「泣いている子ども」状態から変化するきっかけがなかったポジションというようにみえます。

 この「泣いている子ども」が、自分で自分をゆるせて、自分を大事にできるようになるかという話。

 あんまりこういう話に関して追ったことがない方はピンときて頂けるかわからないところですが、カイゼリンのような状態の場合、「まず自分で自分自身をゆるせる。そのあと、相手をゆるせる」の順番が普通だったりします。

 ソラさんは物語をとおして、もう自分はゆるせています。だから、カイゼリンをゆるせる素地はある。

 カイゼリンさんの方も、自分で自分を制御できないかのような描写がどちらかというと「泣いている子ども」なので、エルレインへの復讐心みたいなのは表の方で、深層の方ではこんな事態を引き起こしてしまった自分を責めている(ゆるせていない)ように思われます。

 その場合、カイゼリンさんも自分自身をゆるせれば、エルレインさんを(真相の話はともかく)ゆるせる素地ができる。

 ソラさんとカイゼリンという「泣いている子ども」二人。大事な他者と反目して、それまでの自分の世界に閉じかけた/閉じた二人。

 ソラさんの方のお話は、第23話(感想)の脱・シャララ隊長をなす話と、第42話の未熟な自分も大事な自分自身としてゆるす話で一区切りついているので、あとはカイゼリンの方がどうなるのか。

 カイゼリンも自分をゆるせました。あるいは、やはりソラさんとは別ルートとして、閉じていたのでゆるせませんでした、なりに、帰結が描かれれば、僕としては『ひろがるスカイ!プリキュア』という作品はちゃんと幕が降りたなと納得できそうです。

 できれば、カイゼリンの方にも救いがあるといいなとは思っておりますけどね。子どもの頃に心に負荷を負って、大事な相手と反目して、自分が逃げ込みやすい自分の文脈の世界観に閉じたくなる気持ち、ソラさんにも分かる要素と思われるので、やっぱりましろさんには出会えなかったので、カイゼリンの方は破滅ですというのは、ちょっと悲しいですからね。

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→前回:『ひろがるスカイ!プリキュア』第36話の感想〜どこか自分自身への無価値感がきっかけだったキャラクターたちが少しずつ自由になって他者へと開かれていくへ
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